2020 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌の前癌状態と考えられる急性虫垂炎の予防法開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
20K08941
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
江村 隆起 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (70420065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古村 眞 埼玉医科大学, 医学部, 客員教授 (10422289)
渡辺 栄一郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40623327)
尾花 和子 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60272580)
佐藤 毅 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60406494)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 口腔内細菌叢 / 虫垂炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
虫垂炎に対する予防法を確立することを目的として以下の検討をおこなった。 Ⅰ:小児の口腔内細菌叢・腸内細菌叢および虫垂内細菌叢の分析を行い、虫垂炎に特徴的な細菌叢を特定する。 Ⅱ:正常小児の口腔内・腸内細菌叢および生活習慣の分析から細菌叢の分類を行い、虫垂炎に相関する生活習慣・細菌叢を特定する。 虫垂炎症例10例、正常小児14例の上記細菌叢を16S解析より分析した結果、600種以上の細菌が検出された。細菌分類における科(Family)における細菌叢の解析を行ったところ、虫垂炎の虫垂細菌叢は、フゾバクテリウム科細菌等の口腔内細菌が優勢で、全体の約半分を占めており、虫垂内の嫌気性条件は、特に口腔内の偏性嫌気性菌にとって有利であり、虫垂炎に際して炎症の進行に関与していると推察された。虫垂炎群と健常群の便の細菌叢の比較では、 健常群で、ラクノスピラ科細菌とビフィドバクテリウム科の細菌が増加しており、虫垂炎群ではポルフィノモナス科の細菌が増加していた。フゾバクテリウム科細菌では優位差を認めなかったが、健常群において便内のフゾバクテリウム陽性4例と陰性10例を比較したところ陰性例ではラクノスピラ科細菌が増加していた。フゾバクテリウム陽性例は、年長児に多い傾向があった。症例数が少なく、口腔と腸内細菌叢の相関性を示唆する因子の同定には至っていない。腸内細菌叢の多様性を獲得する小児期に、フゾバクテリウム科細菌などの口腔内細菌が腸内に移行していると考えられるが、短鎖脂肪酸産生菌であるラクノスピラ科細菌が優勢な腸内細菌叢ではフゾバクテリウム科細菌が少数であった。生活習慣、既往歴の分析では虫垂炎群で、抗菌薬投与後の下痢の発症率が高い傾向があったが、その他には一定の傾向を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当院において新型コロナウイルス感染症による診療制限があり、本研究では飛沫感染のリスクがあるため、約半年間に渡り研究実施が困難な状況であった。また、年少児の口腔内診察が困難であり、年少児の症例が少なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、コロナ下の臨床研究体制を整備した。また年少児の口腔内診察を全身麻酔下に行う体制を整備したことにより、本年度は研究症例の増加が見込まれる。データ集積後には速やかにデータ解析に移行する。
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Causes of Carryover |
昨年度は、新型コロナウイルス感染症による診療制限があり、研究実施が困難な時期があったため研究実施に遅れが生じた。コロナ下での臨床研究実施体制を整備したため、本年度は計画通りに研究を実施できる見込みである。
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