2021 Fiscal Year Research-status Report
TRIMファミリー蛋白質を介する新たな乳がん悪性化メカニズムの解明と臨床応用
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20K08945
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東 浩太郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30401110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 聡 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (40251251)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳がん / TRIM47 / TRIM39 / TRIM44 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者がこれまで解析を行っているTripartite Motif (TRIM)ファミリー蛋白質が、乳癌悪性化・治療抵抗性にかかわる分子メカニズムの解明とその応用を目指している。2021年度は、TRIMファミリーのうちTRIM47に着目し、これらの関連因子の免疫組織学的な解析、メカニズムの分子生物学的解析を行い、ホルモン療法抵抗性乳がんにおけるTRIM47の役割に関する論文発表を行い、Proc Natl Acad Sci U S A誌に掲載された。また、TRIMファミリーのうち、TRIM39に関する免疫組織学的解析および機能解析を行い、ホルモン受容体陽性乳がんにおける予後悪化因子であることを示した。さらに、昨年度に解析を行ったTRIM44の乳がんにおける役割に関する学会発表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホルモン療法によって治療された乳がん患者さんを対象に、免疫組織検査という手法で腫瘍の中のTRIM47という蛋白質の量を調べたところ、TRIM47の量が多い乳がんの患者さんに再発が多いことを見出し、TRIM47の蛋白質の量を調べることによりホルモン療法の効きにくさを予測できることを示した。また、本研究では、TRIM47が細胞の中でPKCepsilonおよびPKD3という二種類のリン酸化酵素に結合し、安定化することにより、ホルモン療法の効きにくさにつながるNF-kappaBという信号が伝わりやすくなる仕組みも解明した。乳がん細胞内のTRIM47の量を増やすと、ホルモン療法に用いる抗がん剤を入れても増殖し、一方でTRIM47の蛋白質量を減らすと、細胞の増殖が起こりにくくなることも示した。これらの結果より、TRIM47を減らす治療は、ホルモン療法が効きにくい乳がんの新しい治療法になりうることが推測された。この結果は、乳がん組織のTRIM47蛋白質の情報を活用することにより、有効な治療法が見つからなかった乳がん患者さんに対して、より有効で個別化した治療法の提供につながると考えられる。本研究の結果は、Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 Aug 31;118(35):e2100784118. doi: 10.1073/pnas.2100784118.に掲載された。 また、エストロゲン受容体陽性の乳がん患者さんを対象に、免疫組織検査という手法で腫瘍の中のTRIM39という蛋白質の量を調べたところ、TRIM47の量が多い乳がんの患者さんの予後が悪いことを見出した。また、TRIM39は、細胞周期を促進することを見出し、論文発表を行った(Pathol Int. 2022 Feb;72(2):96-106. doi: 10.1111/pin.13190.)。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでエストロゲン受容体陽性乳がん細胞にてその役割を解析してきたTRIMファミリーの、エストロゲン受容体陰性乳がんにおける役割の解析を行う。また、本研究の過程でこれまで同定してきたTRIMファミリーの結合分子の解析を進め、さらに詳細にな生物学的なメカニズムを解明する。さらに、これらの分子が生体内における治療標的になりうるかどうか、動物モデルを用いて検証する。
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Causes of Carryover |
特に予算執行を控えたわけではなく、通常の研究活動を行った結果、少量の残額が発生した。翌年度分の予算と合わせ、主として物品費として使用することにより、研究を遂行していく予定である。
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Research Products
(6 results)