2020 Fiscal Year Research-status Report
不均一な乳がんに特異的な腫瘍抗原の同定と免疫細胞活性化メカニズムの解明
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20K08968
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
有馬 好美 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20309751)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がんの不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんはゲノム変異やエピゲノム変化に基づく多様性を有し、同一腫瘍内には性質の異なるがん細胞が混在する。この腫瘍内不均一性は、がんの悪性化および治療抵抗性の重要な要因となることが知られている。マウスモデルを基盤として、不均一ながん組織を破壊した際に特異的に検出される腫瘍抗原を同定するとともに、免疫機構を活性化する新規治療のターゲットを明らかにし、本研究期間内に、不均一な乳がんの根治につながる免疫治療法の分子基盤および分子機構を解明したい。これまでに、ヒト由来の異なる2種類のトリプルネガティブ乳がん細胞株を混合して、免疫不全マウスの乳腺組織に移植することによって不均一ながん組織を構築した。この不均一乳がんモデルは、上皮性がん細胞と間葉系がん細胞から成るものである。このxenograft(異種移植)マウスモデルに加え、当該年度においては、よりヒトに近い腫瘍免疫系を反映したシンジェニック(同系移植)マウスモデルの構築を行った。これは、免疫系が保たれた同系マウスへのtumor-initiating cellsの移植に基づくものであり、免疫細胞などのがん周辺微小環境とがん細胞との相互作用を解析することが可能である。構築したシンジェニックマウスモデルが、CDX (cell line-derived xenograft)やPDX(patient-derived xenograft)に代わる、もしくは補完可能な非臨床実験モデルとなりうると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響により、実験を中断しなければいけない時期があったため、やや遅れている。乳がんに先立ち、肺腺がんおよび胆道がんについてtumor-initiating cellsを樹立した。これらの細胞は、免疫系が保たれた同系マウスへの移植により、高効率にがんを形成することができた。マウスにおいて形成された腫瘍の病理像は、それぞれヒト肺腺がんおよび胆道がんの病理像と酷似していることが分かった。現在、それらマウス腫瘍における免疫細胞について解析を行っているところである。腫瘍組織内にはPD-L1発現細胞が含まれており、免疫組織染色の解析よりCD4+T細胞とCD8+T細胞の存在も確認できたことから、本研究の基盤となるシンジェニックマウスモデルが確立できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した肺腺がんおよび胆道がんマウスモデルにおけるがんの不均一性および免疫細胞との相互作用について解析を進める。さらに、肺腺がん・胆道がんマウスモデル作製法を応用して乳がんのtumor-initiating cellsを樹立する。肺腺がん・胆道がん・乳がんモデル(細胞およびマウス)を用いて、腫瘍内不均一性と免疫機構との関連について解析し、がん細胞と腫瘍周辺微小環境との相互作用メカニズムを解明する。さらに、臨床サンプルを用いて、がん組織の複雑性とがんの悪性度および治療抵抗性との関係について明らかにするとともに、免疫細胞の意義について明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由)出席する予定だった国際学会がweb開催となり出席を見合わせた。国内学会についてもweb開催となったため出張が中止となった。
(使用計画)学会が開催されれば出席するための旅費および学会参加費として使用する。
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Research Products
(6 results)