2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a self-supporting ultrathin polymer film (nanosheet) for preventing postoperative suture failure and adhesion
Project/Area Number |
20K08979
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横田 一樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60721090)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 広夫 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40275699)
檜 顕成 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (90383257)
城田 千代栄 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20378194)
武岡 真司 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20222094)
藤枝 俊宣 東京工業大学, 生命理工学院, 講師 (70538735)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 高分子ナノシート / 補強材 / 腸管吻合 / 縫合不全 / 癒着 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ナノシートの作製 マイクログラビアコート法により、「polycaprolactone(PCL)ナノシート」を作製した。また、生体接着性に優れたポリドーパミン(PDA)を修飾した「PDA-PCLナノシート」、シリカナノ粒子を添加した「PCL-silicaナノシート」を作製し、接着力向上を企図した。さらに、PCL-silicaナノシート上にキトサンとアルギン酸ナトリウムを積層した「LbL-PCL-silicaナノシート」、及びアミド結合を形成するカップリング剤である1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide(EDC)をキトサンに混合した「LbL-EDC-PCL-silicaナノシート」を作製し、抗菌性と接着性の向上を図った。 2.接着性能の検証 各ナノシートを豚小腸表面に貼付し、ずり方向に荷重をかけて接着エネルギーを測定した。加えて、ナノシート貼付前にシリカナノ粒子分散液(CS)を腸表面に塗布することで、表面積増大による接着力向上を企図した。結果、PDA、シリカナノ粒子、LbL-EDC、及びCSの添加により、各修飾による接着性能向上の効果が見られた。 3.ラット縫合不全モデルを用いた動物実験 ラットの腸管縫合不全モデルを作成し、縫合部にナノシートを貼付した。接着性能の観点から、PDA-PCL、CS-PDA-PCL-silica、及びLbL-EDC-PCL-silicaナノシートを使用した。PDA-PCL及びCS-PDA-PCL-silica群では接着性能が不十分で、縫合部から内容物が漏出し死亡した。一方、LbL-EDC-PCL-silica群の場合、ラットは一週間生存した。さらに、ナノシートの存在や癒着の所見は認められなかった。これより、LbL-EDC-PCL-silicaナノシートは縫合不全防止材として有用である可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初、1年目に予定していた「1.1 PCLナノシートの作製」は完了したため。また、上述の各種修飾方法によりナノシートの接着性能の向上が実現し、ラット縫合不全モデルを用いた動物実験においても一定の癒着防止効果及び漏出防止効果が確認できた。そのため、「1.2 組織接着性ナノシートの作製」も概ね完了したと判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、LbL-EDC-PCL-silicaナノシートを吻合部に貼付することで、4針縫合不全ラットを一週間以上生存させることに成功した。しかし、ヒト腸管に適用するためには、腸管内容物が漏出する可能性のある吻合部において、より高い腸内圧に耐えうる優れた接着性と強度が求められる。ところが、脆弱なナノシートのみでは縫合部を確実に補強することは困難である可能性がある。そこで、吻合部から漏出する腸内容物を吸収する生体吸収性ゲルパッドをナノシートと併用することで、ナノシートの脆弱性を補完し、確実な漏出の防止を目指す。現段階ではゲルパッドの素材として、生体適合性と生分解性、また創傷治癒効果に優れたキトサンを検討している。今後は、キトサンからハイドロゲルを作製し、その吸水性と生体適合性、及び生分解性を検証する。最終的にナノシートとキトサンハイドロゲルを組み合わせることで、優れた癒着防止能、漏出防止効果、さらに創傷治癒効果を示す新たな腸管吻合補強材の作製を目指す。
|
Causes of Carryover |
東京や名古屋で会議を予定していたが、オンラインになったため。次年度以降は引き続き、動物実験を中心に縫合不全と術後癒着防止のための自己支持性高分子超薄膜(ナノシート)の開発を進める予定である。
|