2021 Fiscal Year Research-status Report
血管擬態の阻害によるHER2陽性乳癌の新規治療法の開発
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20K08980
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下田 雅史 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (30644455)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳癌 / 高悪性度 / 血管擬態 / Focal adhesion kinase |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性度の高いがん細胞は血管擬態、すなわち血管内皮様の構造を取ることが知られており、腫瘍の急速な増大や転移と密接な関係があるとされる。がん細胞が血管擬態を生ずるためには細胞運動が重要である。乳癌においては高悪性度のもので血管擬態が認められることが報告されている。一方、FAKは細胞運動に必須の接着斑形成を促進するキナーゼであることから、FAKが血管擬態を促進することが予想された。そこで、我々はFAK阻害が高悪性度乳癌の血管擬態を阻害しうるかどうかを検討した。血管擬態のin vitroでの評価系であるチューブ形成アッセイを行うと、FAK阻害薬は数10ないし100 nMのIC50でチューブ形成を阻害した。ウエスタンブロットにより、FAKおよびその標的分子であるp130CasやPaxillinのリン酸化も阻害されていた。細胞運動の阻害はチューブ形成アッセイにおけるtime lapse imaging法やcell migration assayにより確認した。次に免疫不全マウスに高悪性度乳癌細胞株を接種し、腫瘍の発育がFAK阻害薬により抑制されるかを評価した。すると、FAK阻害薬投与群において、有意に腫瘍の発育の抑制が認められた。今後、FAK阻害薬投与群の腫瘍において組織学的に血管擬態が抑制されているのかを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画において現時点では予想と同じ結果が得られており、順調に実験が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、FAK阻害薬投与群の腫瘍において組織学的に血管擬態が抑制されているのかを多面的に検討する。また、FAK阻害により乳癌細胞において接着斑の形成が阻害されているのかを共焦点顕微鏡を用いて詳細に検討したい。 さらに、現在認可されている分子標的薬の中からスクリーニングによってチューブ形成が強力に阻害されるものを見出して、その有用性を検討していくことを予定している。
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Causes of Carryover |
2021年度は他の資金の使用も可能であったため、若干の繰越が生じたが、次年度は動物実験や論文出版のため多くの支出が予想され、本助成金を全て使用する予定である。
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