2022 Fiscal Year Annual Research Report
血管擬態の阻害によるHER2陽性乳癌の新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K08980
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下田 雅史 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30644455)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血管擬態 / vessel co-option |
Outline of Annual Research Achievements |
HER2陽性乳癌やトリプルネガティブ乳癌は増殖力が高く転移しやすいことが知られている。我々は先行研究においてHER2陽性乳癌の悪性度が増すと種々の血管内皮マーカーを発現する様になることを見出し、いわゆる血管擬態が生じているのではないかと考えた。In vivoにおいて血管擬態は、癌巣内でCD31陰性periodic acid-Schiff (PAS)染色陽性の細胞によって管腔構造を示すとされている。しかし、我々はこのクライテリアには特異性の面で問題があると考えた。血管擬態のマーカーとして確立されたものはないが、近年、癌細胞が血管との親和性が増すと内因性セリンプロテアーゼ阻害タンパクであるserpinsがupregulateされることが明らかになってきた。そこで我々は、serpinsの一種であるSERPINE2がマーカーになるのではないかと考え、癌巣内でのSERPINE2の発現を検討した。HER2陽性乳癌細胞株(JIMT-1)とトリプルネガティブ乳癌細胞株(MDA-MB-231)の2種をNOD-SCIDマウスの乳腺に接種し、形成された腫瘍を採取した。ヒトSERPINE2、マウス赤血球マーカーTER119、マウス血管内皮マーカーCD31を蛍光免疫染色したところ、血管擬態で予想されるようなSERPINE2陽性癌細胞による管腔構造および内腔にマウス赤血球が存在する様な像は認められなかった。その代わり、SERPINE2陽性癌細胞がマウス血管の周囲を取り囲むように存在する像が多数認められた。したがって、高悪性度乳癌においては、血管親和性の増した癌細胞により血管擬態が生じるというよりも、いわゆるvessel co-optionが生じているのではないかと推測している。今後はこれを示すための検討を行う予定である。
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