2020 Fiscal Year Research-status Report
新規治療薬開発を目指した腫瘍微小環境におけるPD-L1発現の意義と機序解明
Project/Area Number |
20K08984
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
塚本 雅代 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (30836268)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 克憲 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (60555746)
林 洋光 熊本大学, 病院, 助教 (80625773)
岡部 弘尚 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (40573621)
中川 茂樹 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (10594872)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 膵癌 / PD-L1 / マクロファージ / TNF-α |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は予後不良な疾患の一つである。根治の望める治療法は手術のみであるにも関わらず、診断時には既に進行していることが多く、手術適応となるのは15-20%である。近年、抗PD-1抗体等の免疫チェックポイント機構を利用した薬剤が消化器癌においても使用され、その臨床的有用性が注目されている。膵癌におけるPD-L1の発現は約40%で認められ、膵癌細胞におけるPD-L1の発現が高い群は予後不良であることがこれまでに示されている。しかし、PD-L1発現のメカニズムは未だ明らかにされていない。本研究の目的は、膵癌におけるPD-L1の発現メカニズムを解明し、膵癌の新たな治療戦略開発について検討することである 癌細胞の進展や薬剤耐性の発現において、癌細胞だけでなく腫瘍微小環境が重要であることが近年注目されている。一方で、膵癌の発癌の過程には炎症が関与していることが知られている。我々は、腫瘍間質細胞の中でも特に炎症と関連の深いマクロファージに焦点を当て、膵癌におけるPD-L1の発現と腫瘍浸潤マクロファージとの関連について解析した。膵癌細胞におけるPD-L1発現の意義は不明な点が多く、PD-L1発現がどのように制御されているかは殆ど解明されていない。特に、膵癌に対する免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験の結果は他の癌腫に比較して良好な治療効果が得られておらず、これを打破する工夫が必要である。癌細胞におけるPD-L1発現の制御メカニズムが解明されれば、免疫チェックポイント阻害剤の治療成績向上、有用なバイオマーカーの同定、ひいては新たな創薬へと繋がることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の対応が喫緊の課題としてあり、予定通りに実験が進まなかったため
|
Strategy for Future Research Activity |
TNFRの発現とそのタイミング:申請者は、腫瘍微小環境に存在する免疫細胞の中でマクロファージに焦点を当て、実験に用いた全ての表現型の活性型マクロファージがtumor necrosis factor (TNF)-αを産生することと、TNF-αが膵癌細胞株におけるPD-L1の発現を増強することを既に確認している。また、活性型マクロファージと共培養した膵癌細胞で、PD-L1の発現が増強されることも確認した。今後は、in vitro で活性型マクロファージと共培養した膵癌細胞株及び臨床検体において、TNF-α receptor (TNFR) の発現を確認し、また、TNFR発現のタイミングについても検討したいと考えている。 臨床検体を用いた研究:臨床検体を用いた免疫組織学的解析を行い、抗PD-L1抗体、抗マクロファージ抗体(CD163, CD204, IbaI, CD68)、その他の免疫担当細胞に対する抗体(CD8, Treg, MDSCs)を用いて、実際の癌組織において、マクロファージとPD-L1発現の局在が一致するかを検討する。 CD8陽性Tリンパ球の活性:CD8陽性Tリンパ球の局在や、数のみでなく活性についても検討する。 動物モデルを用いた研究:膵癌発癌モデルマウスを用いたin vivoの解析を行う。KPCマウス(遺伝子改変モデルマウス)に抗PD-L1抗体を加えて腫瘍径を3D超音波にて計測する。更にTNF-α阻害剤投与群と非投与群に振り分けて腫瘍径を3D超音波にて計測する。更に、膵外転移の有無、生存を観察し、膵癌に対する新たな治療戦略の可能性を追求する。
|
Causes of Carryover |
理由:試薬、消耗品については、医局内保管のものを使用することができた。また、旅費については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により学会開催形式がハイブリッド開催へ変更となる事が多く出張が減った為、未使用額が生じた。
使用計画:試薬、消耗品の購入及び研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたい。また、最新の研究情報を得るため、及び、研究成果発表のための学会出張旅費にも充てたいと考える。
|