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2022 Fiscal Year Research-status Report

肝芽腫細胞間を連結する細胞膜ナノチューブの構造解析とがん悪性化に関わる役割

Research Project

Project/Area Number 20K08990
Research InstitutionSaitama Medical University

Principal Investigator

藤田 恵子  埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80173425)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords肝芽腫 / 細胞膜ナノチューブ / がん微小環境 / 細胞間コミュニケーション
Outline of Annual Research Achievements

細胞膜が伸長した細胞膜ナノチューブ(membrane nanotube, tunneling nanotube, TNT)は、遠隔にある細胞同士を物理的に連結して細胞から細胞へのシグナル輸送を可能にし、細胞間コミュニケーションをダイレクトにつかさどる。腫瘍におけるがん化にも細胞膜ナノチューブによるタンパク質輸送が関与していると考えられている。
これまで小児悪性腫瘍である肝芽腫(hepatoblastoma)における微小環境(ニッチ)の特性、ヒト肝芽腫細胞間における細胞膜ナノチューブの構造と機能について検討してきた。肝芽腫細胞間には種々の構造の細胞膜ナノチューブが形成されるが、チューブで連結された細胞の多くは共通した特徴を有していることが確認された。
肝芽腫細胞株(HuH-6 Clone-5)を用いて2次元培養を行うと、細胞膜ナノチューブにより連結された肝芽腫細胞の多くは球状を呈し、扁平に進展した細胞上に接着した状態で認められた。ポリマーベースのナノファイバースキャホールド上で3次元培養を行うと、走査型電子顕微鏡により同様の形態の細胞が観察された。
特有の形態を示す細胞には、細胞膜ナノチューブ形成を誘導するタンパク質であるM-Sec(TNFα-induced protein2, Tnfaip2)の存在が確認された。また、がん細胞の増殖を促進するmTOR(mammalian target of rapamycin)、がん細胞の移動と浸潤能を亢進させるIL-6の受容体(IL-6R)に対する強い反応も認められた。さらに、免疫染色を用いたin vivoイメージング法により生細胞を観察した結果、細胞膜ナノチューブを介したミトコンドリアの移送がみられた。SEMによる観察では細胞膜ナノチューブに球状構造(gondola)が観察され、ミトコンドリアの移送が示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

小児悪性腫瘍である肝芽腫(hepatoblastoma)における微小環境(ニッチ)の特性、ヒト肝芽腫細胞間における細胞膜ナノチューブの構造と機能について研究を進めてきた。2022年度は細胞膜ナノチューブを形成する細胞の特性について検討した。
実験の結果、肝芽腫細胞間には種々の構造の細胞膜ナノチューブが形成されるが、細胞膜ナノチューブで連結された細胞の多くは共通した特徴を有していることが確認された。2次元培養を実施すると、細胞膜ナノチューブにより連結された肝芽腫細胞の多くは球状を呈し、扁平に進展した細胞上に接着した状態で認められた。走査型電子顕微鏡を用いた3次元培養による観察でも同様に、球状を呈する細胞が認められた。
特有の形態を示す細胞には、細胞膜ナノチューブ形成を誘導するタンパク質であるM-Sec、がん細胞の増殖を促進するmTOR、がん細胞の移動と浸潤能を亢進させるIL-6の受容体(IL-6R)に対する強い反応が認められた。また、免疫染色を用いたin vivoイメージング法により、細胞膜ナノチューブを介したミトコンドリアの移送を観察することができた。ミトコンドリアの移送についてはSEMによる観察でも示唆する所見を得ることができた。
本課題の研究成果は日本解剖学会総会・全国学術集会で発表した。コロナ禍のため誌上開催あるいはWeb開催が続いていたが、今年度は久しぶりに対面開催となり、実際に学会場にて発表・討論することにより、本課題の実験を遂行するにあたって非常に有用な情報交換ができた。

Strategy for Future Research Activity

小児肝臓の悪性腫瘍で罹患率の高い肝芽腫(hepatoblastoma)の新たな治療法開発のために、肝芽腫細胞株(HuH-6 Clone-5)による培養実験を用いた基礎的な面から、肝芽腫の病態解明の研究に取り組んできた。とくに、離れた細胞間の物質輸送やシグナル伝達をになう「細胞膜ナノチューブ」の細胞間コミュニケーションに注目し、その構造と機能の解析を進めた。細胞膜ナノチューブを介して、複数の細胞間で複雑で特異的なメッセージの伝達が可能になり、がんの増殖・転移が進むことが考えられる。
2023年度も、肝芽腫の微小環境とくに細胞間コミュニケーションをターゲットとした新たな治療法開発のため、肝芽腫細胞間をつなぐ細胞膜ナノチューブと微小環境の特性解明に焦点を絞り、研究を推進したい。
本研究の目的である、① 細胞膜ナノチューブの構造と役割、② 細胞膜ナノチューブによる物質運搬と肝芽腫細胞の悪性化の関係、③ 肝芽腫幹細胞と細胞膜ナノチューブの関係の解明を進めていきたい。引き続き、細胞膜ナノチューブによって連結される細胞の特性について、とくに細胞膜ナノチューブは肝芽腫幹細胞とがん細胞を連絡するのかという点に焦点を絞り、実験を実施する予定である。

Causes of Carryover

本申請課題を延長した最終年度である2023年度は、引き続き、細胞膜ナノチューブによって連結される細胞の特性について実験を進めていく予定である。とくに、細胞膜ナノチューブで連結された細胞は形態的に大きな特徴があることが確認されたので、免疫染色を用いて光学顕微鏡ならびに走査型電子顕微鏡によりさらに確認を進めていく予定である。
細胞膜ナノチューブにより連結された特徴的な球形の細胞がどの細胞周期に属するか検討を進めてきたが、使用していた細胞周期判定試薬で処理すると、接着型の培養細胞が剥がれてしまうという不具合が生じたため、試薬の再検討を進めている。これにより、2023年度に研究費の使用を延長とした。
また、2023年度も培養実験器具、免疫染色用薬品(抗体など)の購入を計画している。さらに、2023年度は本研究課題の最終年度であるため、研究成果を学会発表・誌上発表したいと計画している。

  • Research Products

    (1 results)

All 2023

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 細胞膜ナノチューブによって連結されたヒト肝芽腫細胞の特性について2023

    • Author(s)
      藤田恵子、松本幸子、藤田一正、穐田真澄、永島雅文
    • Organizer
      第128回日本解剖学会総会・全国学術集会

URL: 

Published: 2023-12-25  

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