2020 Fiscal Year Research-status Report
肝胆膵領域のがん間質の線維化についての解析 新たなバイオマーカーや治療標的の探索
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20K08996
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
祝迫 惠子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (70625300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
趙 向東 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定助教 (00444464) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん / 線維化 / 腫瘍浸潤リンパ球 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝胆膵領域のがん組織の多くは「がん間質の線維化」という共通した病理組織学的所見があることから、がん間質に存在する筋線維芽細胞や免疫細胞について、形態学的、分子生物学的解析を行い、その役割や相互作用を明らかにすることを目的とし、今年度は、肝細胞がん、肝内胆管がん、膵がん症例のパラフィン切片を入手し、免疫組織学的解析を開始した。これまでに、肝内担癌がんについて、がん組織へのCD8陽性T細胞の浸潤やFOXP3陽性T制御性T細胞の浸潤が予後に関連することを確認していたが、今年度は新たにCD20陽性B細胞の浸潤を定量化し、浸潤が多いほど予後が良好であることを見出した。CD20陽性B細胞の浸潤は、CD8陽性T細胞の浸潤と正の相関を示し、免疫細胞が集簇する病理組織学的所見が認められる症例は予後がよい傾向を示した。 さらに、肝内胆管がんのがん間質に豊富に存在する細胞外基質について、コラーゲンのタイプ別に染色を行い、定量的解析を行ったところ、非がん部に比較してがん部にはコラーゲンタイプ3が多く存在することが分かった。コラーゲンの産生細胞について、その由来(ディッセ腔に存在する肝星細胞、または門脈域の線維芽細胞)を免疫組織学的に解析し、コラーゲンのタイプ別の多寡や構成割合との関連について解析を進めている。この解析により、がん組織に特有の線維化のメカニズムを見出せる可能性があり、このことが癌の増生に影響する場合は、予後予測因子となる可能性がある。また、がんの増生を促進する場合は、治療標的となりうると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新型コロナ禍により、臨床検体の新たな収集が困難な状況となったが、本研究課題は保存済の臨床検体を用いるため、大きな影響を受けることなく研究を進めることができた。研究体制として、当初、京都大学に研究分担者を置いていたが、異動などにより削除したが、新たな検体収集ができない状況となったため、むしろ影響を最小限にとどめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫組織学的解析を肝内胆管がんだけでなく、肝細胞がん、膵がんについても行う。さらに免疫組織学的解析においては、適切な抗体が存在しない場合もあるので、がん組織の遺伝子発現解析を行う。予後関連因子を抽出し、がんの増生に免疫細胞や筋線維芽細胞が与える影響について、in vitroで各種がん細胞株との共培養、薬剤添加による影響を検証し、治療標的としての可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
抗体の購入金額が予定よりも少し低く抑えられたため次年度使用額が31,801円生じた。2021年度の消耗品購入に充当する予定である。
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