2020 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーによる静止期大腸がん幹細胞の維持機構の解明
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20K09023
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
大畑 広和 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40570057)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸がん組織において、「がん幹細胞」を頂点とした階層性が存在し、高い造腫瘍能や治療抵抗性を有するがん幹細胞が、がんの再発や転移に深く関与していると考えられている。それ故、大腸がんの治療抵抗性を克服する方法として、がん幹細胞を標的とした治療法の開発が強く望まれている。 これまでに申請者は、ヒト原発大腸がんより樹立した大腸がん幹細胞を用いた種々の研究により、大腸がん幹細胞には増殖型と静止型のがん幹細胞が存在し、後者の細胞が強い治療抵抗性を示すことを見出した。また、オートファジー抑制因子であるmTORの活性化が大腸がん幹細胞の増殖に必須である事を明らかにした。以上のことより、抗がん剤等に治療抵抗性を示すような静止型がん幹細胞では、mTOR活性は抑制され、オートファジーが活性化していることが示唆される。そこで、本研究はオートファジー活性化による静止期がん幹細胞の維持機構を解明し、静止期大腸がん幹細胞を標的とした治療薬の開発に繋げることを主な目的とする。 初年度である令和2年度は、培養大腸がん幹細胞(オルガノイド)を用いて、オートファジー活性の高い大腸がん幹細胞は静止期にあること、大腸がんに対する既存の抗がん剤処理により残存する治療抵抗性細胞はオートファジー活性が高い静止期大腸がん幹細胞であることを明らかにした。 次年度以降は、静止期大腸がん幹細胞の遺伝子発現プロファイルを明らかにし、新しい治療標的分子を探索すること、オートファジー経路阻害薬が抗がん効果を示すかどうかの検証などを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である令和2年度は、初めにオートファジー活性の高い大腸がん幹細胞は静止期にあるかを解析した。培養大腸がん幹細胞(オルガノイド)を用いて、オートファジー活性化状態の異なる細胞をフローサイトメーターにより分取し、静止期マーカーの発現をリアルタイムPCRやウエスタンブロットにより検証した。その結果、オートファジーが活性化している細胞は、静止期大腸がん幹細胞であることが明らかとなった。 次に、大腸がんに対する既存の抗がん剤処理により残存する治療抵抗性細胞はオートファジー活性が高い静止期大腸がん幹細胞であるかを検証した。培養大腸がん幹細胞(オルガノイド)に抗がん剤(イリノテカン)を処理し、フローサイトメトリーやリアルタイムPCRなどを用いて解析した結果、予想通りの結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで研究は順調に進展しているので、今後も当初の計画通りに進めていく予定である。具体的には、静止期大腸がん幹細胞の遺伝子発現プロファイルを明らかにし、新しい治療標的分子を探索すること、オートファジー経路阻害薬が抗がん効果を示すかどうかの検証などを行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延による社会情勢の影響により、旅費などを使用する機会がなかった。また、免疫不全マウスを用いた動物実験などは次年度以降に実験を行う予定である。
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Research Products
(3 results)