2021 Fiscal Year Research-status Report
ファルネシル化に着目した胃癌悪液質に対する新規治療開発に向けた基礎的研究
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20K09037
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
能城 浩和 佐賀大学, 医学部, 教授 (90301340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智和 佐賀大学, 医学部, 助教 (60781903)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 癌悪液質 / ファルネシル化 / ファルネシル転換酵素阻害薬 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「胃癌悪液質の発症、進展におけるファルネシル化の意義を分子レベルで解明すること」、「FTIによる胃癌悪液質の発症予防および既に発症した悪液質の是正効果の検証とその作用機序を解明すること」である。 ①まず、前年度に引き続き、高頻度腹膜播種形成胃癌細胞株である58As9をヌードマウスに腹腔内投与し、対象群に比して腹膜播種および腹水貯留を伴い、骨格筋重量(ヒラメ筋、腓腹筋、前脛骨筋)や脂肪組織重量(皮下(鼠径部)や腹腔内(生殖器周囲、後腹膜)の脂肪組織)が低下していること、腫瘍を除く体重が減少していることを確認し、胃癌悪液質マウスモデルが作成されることの再現性を確認した。 ②採取した血液血清成分の炎症性サイトカイン(TNF-αおよびIL-6など) を測定したところ、胃癌悪液質マウスモデルにおいて上昇する傾向が確認された。 ③胃癌悪液質マウスモデルを用いて、ファルネシル変換酵素阻害薬(FTI)の悪液質発症抑制効果(腫瘍形成後よりFTI投与開始)の評価に取り組んだ。その結果、FTI投与群において、骨格筋重量および脂肪組織重量の低下が抑制される傾向を認めた。また、腫瘍を除く体重に関しても、その減少率が抑制される傾向を示した。なお、腹膜播種および腹水貯留の程度に関しては、その比較方法について検討中である。現在、FTIの投与量や投与開始タイミングの指摘条件について決定し、FTIの悪液質是正効果(腫瘍形成かつ悪液質発症後にFTI投与開始)の評価実験も継続中である。 動物実験の後、in vitro実験として悪液質誘導胃癌細胞株として58As9を使用し、細胞のファルネシル化やFTase発現を評価、また、培養上清中の炎症性サイトカインの測定、さらにはFTI添加によるそれらの変化を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に新型コロナウイルス感染症に伴う試薬などの入荷遅延(特に海外経由)や動物実験棟における一時的な搬入制限などがあったことの影響が、現在までの研究の進捗にやや影響している。胃癌悪液質マウスモデルが確立できたこと、FTIの投与量や投与開始タイミングの指摘条件がほぼ決定できたことから、in vivo実験の進捗には大きな影響はないものと思われる。ただ、研究計画で予定していたin vitro実験については、in vivo実験に時間を要した影響でやや進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
①in vivo実験に関しては、FTIの悪液質発症抑制効果(腫瘍形成後よりFTI投与開始)に加え、その是正効果(腫瘍形成かつ悪液質発症後にFTI投与開始)の評価(項目: 体重、fat & lean mass、臓器・筋肉重量、白色・褐色脂肪重量比、血漿中炎症性サイトカインなど)を継続的に行う。概ね期待通りの結果が得られている。 ②今後は、in vitro実験に研究の主体を移し、高頻度腹膜播種形成胃癌細胞株である58As9を用いてファルネシル化やFTase発現を評価、また、培養上清中の炎症性サイトカイン (TNF-αやLIF (leukemia inhibitory factor)、IL-1&6など) の測定、さらにFTI添加によるそれらの変化を評価する。また、骨格筋in vitroモデルとしてC2C12横紋筋由来細胞株を、脂肪組織in vitroモデルとして3T3-L1脂肪細胞株を使用し、癌悪液質環境におけるこれらの分子生物学的な変化、またFTIによる是正効果をin vitro実験で評価する予定である。 ③さらに免疫染色などで「外科切除標本のファルネシル化評価および臨床データとの関連性評価」を行い、解析データのまとめを行う。
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Causes of Carryover |
本年度に実施完了予定であったin vitro実験を次年度に延期したため、これらを当初予定していた次年度の研究計画に加える。
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