2021 Fiscal Year Research-status Report
食道癌リンパ節転移を支配する決定的なRNA修飾(エピトランスクリプトーム)の解明
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20K09048
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
本山 悟 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (60292372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久場 敬司 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (10451915)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | RNA-seq解析 / 空間的トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マウス扁平上皮癌由来のNR-S1M細胞の皮下移植腫瘍のリンパ節・肺転移モデルを用いて、がん転移に重要な制御因子を同定することを目指して研究を行った。 NR-S1M皮下腫瘍をin vivoで継代することにより、悪性度の高いNR-S1M転移株を単離した。 RNA-seq解析では、コントロールである親株細胞と比較し、NR-S1M転移株ではサイトカインネットワークが大きく変動していた。サイトカインネットワークの破綻は免疫応答に影響を及ぼすことが考えられるため、形成したNR-S1M腫瘍巣における免疫応答を検討した。免疫染色の結果からCD8陽性T細胞及びCD11c陽性樹状細胞の腫瘍組織への動員が確認されたが、一部の領域ではこれら抗腫瘍免疫細胞の割合が顕著に低下しており、がん微小環境下における免疫抑制区域の存在が示唆された。 次にVisium空間的トランスクリプトーム解析を行うことにより、NR-S1M腫瘍組織切片の位置情報を反映した数千のスポットの遺伝子発現プロファイルを取得し、それを基にクラスタリング解析を行った結果、抗原提示やインターフェロン応答及び炎症応答が低下している免疫抑制区域の同定に成功した。免疫抑制は転移を含むがんの進行に大きく寄与することが知られているが、当領域において低酸素応答、アポトーシス及び血管新生に関わる遺伝子群の発現が有意に上昇しており、当遺伝子群の中から多くの転移促進因子が確認された。このことから、NR-S1M腫瘍巣における免疫抑制区域は、転移の亢進と関連することが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンパ節転移モデルを確立して、RNA-seq解析を行った結果、転移株ではサイトカインネットワークが大きく変動していることを突き止めた。そこでサイトカインネットワークの破綻から、がん免疫応答への影響へと進み、CD8陽性T細胞及びCD11c陽性樹状細胞の腫瘍組織への動員が確認されたことは明確な成果であった。これらの研究進捗についてはおおむね順調に進んでいると判断した。 さらに、新しいVisium空間的トランスクリプトーム解析を行うことができ、腫瘍組織切片の位置情報を反映した数千のスポットの遺伝子発現プロファイルを取得できたことは大きな成果であった。それを基にクラスタリング解析を行い得た。 当領域において低酸素応答、アポトーシス及び血管新生に関わる遺伝子群の発現が有意に上昇しており、次の研究につながる新知見を得たこれらの研究進捗については当初の計画以上に進んでいると判断した。 一方、高転移細胞および低転移細胞で発現するmRNA、lncRNA、circRNA、pre-miRNA、pri-miRNA、snoRNA、snRNAの各クラスのエピトランスクリプトーム解析、つまり RNAのm6A脱メチル化に関するm6AシークエンスをはじめとするRNAシークエンスについては未だ研究が滞っている。これらの研究進捗については計画よりやや遅れていると判断した。総合的におおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は最終年度であり、研究進展の遅れている高転移細胞および低転移細胞のmRNA、lncRNA、circRNA、pre-miRNA、pri-miRNA、snoRNA、snRNAの各クラスのエピトランスクリプトーム解析、つまりRNAのm6A脱 メチル化に関するm6AシークエンスをはじめとするRNAシークエンスを行う。 さらに、CRISPR-Cas9による遺伝子編集により、同定したRNAをノックダウンさせることによりマウスモデルのリンパ節転移状況に大きな変化が現れるかを検証する。すでに進めているが、2022年度内に新規遺伝子1-2個を突き止める。 また、臨床サンプルを用いて、基礎的研究によって得られた知見結果を検証する予定である。(2022年度)
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Causes of Carryover |
消耗品購入が予定額を下回ったため。
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Research Products
(1 results)