2021 Fiscal Year Research-status Report
肝胆膵領域癌におけるLGR5を標的としたSTAT3活性抑制による新規治療の開発
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20K09049
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
久保木 知 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (50571410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高屋敷 吏 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (30456024)
酒井 望 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70436385)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
鈴木 大亮 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (90422229)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | LGR5 / 肝内胆管癌 / STAT3 / β-catenin / OLFM4 / GRIM19 / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
LGR5は癌でのWnt-β-cateninシグナルを亢進させることが知られているが、肝内胆管癌におけるLGR5発現およびその意義に関して言及した報告は存在しない。 当院におけるR0/1切除が施行された肝内胆管癌61例におけるLGR5発現を評価し、臨床病理学的因子や予後との関連を評価するとともに、肝内胆管癌細胞株を用いてLGR5-β-cateninシグナルによる肝内胆管癌の腫瘍進展機序を検討したところ、肝内胆管癌の臨床検体において、LGR5発現はβ-catenin活性・OLFM4発現・STAT3活性と正の相関、GRIM19発現と負の相関を示した。 LGR5高発現症例ではEMTやcancer stem cell (CSC)-like propertyが増強しており、多変量解析にてLGR5高発現は独立した予後不良因子であった。 細胞実験では、IWP-2によるWntシグナル抑制によりβ-catenin活性が低下し、OLFM4発現低下およびGRIM19発現増強を介してSTAT3活性が亢進し、浸潤能、CSC-like propertyの低下を認めた。よって、Wnt-β-cateninシグナルがOLFM4-GRIM19カスケードを介してSTAT3活性を亢進し、EMTやCSC-like propertyを促進する結果、腫瘍悪性度を高めることが示された。LGR5ノックダウン細胞ではβ-catenin 活性が抑制され、その結果、STAT3活性低下を介して浸潤能、stemnessが低下した。 以上より、LGR5はWnt シグナルを介したβ-cateninの活性化に重要な役割を担っていると考えられ、LGR5により活性化されたβ-cateninシグナルがOLFM4-GRIM19カスケードを介してSTAT3活性を亢進し、EMTやCSC-like propertyを促進すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床検体において、肝内胆管癌でのLGR5がβ-cateninの活性亢進と相関し、OLFM4-GRIM19シグナルを介してSTAT3活性を亢進することが証明できた。また、STAT3活性亢進がEMT亢進、CSC-like property促進を介して、臨床病理学的因子における浸潤能の亢進・血行性転移能の促進が示された。その結果、LGR5高発現が独立した予後不良因子となることが示されたため、臨床検体を用いた研究は概ね予定した結果を得ることが出来た。 また、肝内胆管癌細胞株を用いたLGR5ノックダウンやWntインヒビターなどの実験でも、EMT関連シグナルの増強、浸潤能増強を確認した。また、anoikis assayやStemness marker発現増強を介してCSC-like propertyへのLGR5-β-cateninカスケードの影響が示された。 しかし、動物実験でのこれらのシグナルの証明には至らなかった。また、以前より我々がターゲットとしているSTAT3時活性調節因子であるPin1との関連をまだ検討できていない。Pin1はターゲット蛋白のcis-trans変換をすることで標的蛋白の構造変化を引き起こし、標的蛋白の活性亢進を誘導することが知られており、β-cateninもPin1のターゲット蛋白の一つとされているため、是非、肝内胆管癌におけるPin1のβ-cateninやSTAT3活性亢進への関与も検討したい。また、PD-L1・CD8陽性リンパ球、tumor-associated macrophageなどの腫瘍免疫へのLGR5への関与や、肝細胞癌と肝内胆管癌の可塑性へのLGR5の関与に関する研究を進めることはできなかった。 現在は3年のうちの2年目であるため、おおむね順調に進んでいると考えられるが、最終年にすべきことがまだ残っていると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
Pin1はターゲット蛋白のcis-trans変換をすることで標的蛋白の構造変化を引き起こし、標的蛋白の活性亢進を誘導することが知られており、β-cateninもPin1のターゲット蛋白の一つとされている。よって、切除臨床検体を用いた研究でPin1発現とβ-catenin核内発現や、p-STAT3核内発現の関係を評価し、LGR5のβ-catenin活性亢進やSTAT3活性亢進への関与を検討したい。また、β-catenin活性亢進やSTAT3活性亢進の維持にはLGR5が必須であることを証明したい。 また、現在は動物実験はほとんど進んでいないため、まずは肝内胆管癌細胞株を用いて皮下移植モデルおよび同所性移植モデルをSCIDマウスにて確立したい。そして、LGR5 knockdown細胞の移植やWntシグナルinhibitor投与による抗腫瘍効果、特に浸潤・転移能の変化を評価したい。 更には、LGR5-Wnt-β-cateninシグナルをターゲットとした新規治療の臨床応用を目指してWntシグナルinhibitor投与の抗腫瘍効果を評価するとともに副作用も評価し、副作用軽減のためのdrug delivery system対する研究も進めていき、安全かつ有効性の高い新規治療法開発の架け橋となるtranslational researchを目指していきたい。 また、動物実験にてLGR5の腫瘍免疫への関与を評価し、LGR5をターゲットとした癌免疫療法の進歩にも貢献したい。 また、肝内胆管癌と肝細胞癌は同一のhepatic progenitor cellより分化していき、肝内胆管癌となった後でも、肝細胞癌用の性質を持つように変化する、いわゆる可塑性を持つとされる。よって、肝細胞癌と肝内胆管癌の可塑性へのLGR5の関与についてもアプローチしていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響もあり、動物実験計画が予定通りに進まなかったため、動物実験のために計上した費用は次年度に持ち越すこととなった。また、副作用少なく腫瘍特異的に対応可能な新規drug delivery systemの構築に関しても本年度は対抗困難であった。 また、例年は海外の学会での発表を行っていたが、新型コロナウイルスの影響で、海外の学会へ参加することが出来ずに不使用額が生じた。国内学会に関しても、Web発表が増えたことで現地参加をすることがほとんどなく、旅費を使用する必要がなかった。 以上のことより、本年度の使用予定額の一部を次年度に繰り越して使用できるようにし、翌年分として請求した助成金と合わせて動物実験の遂行・新規分子標的薬の構築・新規drug delivery systemの開発に関する研究を進めていきたい。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] 肝胆道癌において炎症性シグナルを介した転写因子活性亢進は浸潤・転移能を高めることにより腫瘍進展を促進する2022
Author(s)
久保木 知, 古川 勝規, 高屋敷 吏, 高野 重紹, 鈴木 大亮, 酒井 望, 細川 勇, 三島 敬, 小西 孝宜, 西野 仁恵, 大塚 将之
Organizer
第122回日本外科学会総会
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[Presentation] 進行胆嚢癌におけるPD-L1発現の臨床的意義2021
Author(s)
佐藤 豊, 久保木 知, 古川 勝規, 高屋敷 吏, 高野 重紹, 鈴木 大亮, 酒井 望, 賀川 真吾, 細川 勇, 三島 敬, 小西 孝宜, 大塚 将之
Organizer
第121回日本外科学会総会