2020 Fiscal Year Research-status Report
新奇糖鎖を欠損した胃癌自然発症マウスにおける胃癌発生機構
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20K09053
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
春宮 覚 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (50301792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 淳 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10221459)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胃癌 / 糖鎖 / 糖転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
胃腺粘液には末端にα1,4結合型N-アセチルグルコサミン(αGlcNAc)を含む特徴的な糖鎖を有する糖蛋白質が存在する。αGlcNAcを欠損したA4gntノックアウト(KO)マウスは胃分化型癌が自然発症するが、その分子機構は解明されていない。 最近、このKOマウス胃粘膜においてSTAT3等の癌関連シグナルが活性化されていること、またαGlcNAcがIL-11、gp130-STAT3経路を介する発癌シグナルを抑制することで胃癌発症を防御している可能性が見出された。 本研究の目的はこのKOマウスにおける胃癌発生機構を解明し、胃癌の予防・治療法の開発に還元することである。A4gnt KOマウスのSTAT3活性化は発癌の起点となりうるため、令和2年度はその活性化がgp130-JAK経路を介しているのかをIL-11下流で機能しているJAK2に関してリン酸化解析により調べた。5~50週齢におけるJAK2の経時的活性変化の定量解析から野生型マウスと比較して5週齢でのJAK2活性が有意に亢進していた。STAT3活性化は5-10週齢で有意に亢進するため、STAT3活性化上昇と関連していると考えられ、gp130-JAK2経路を介していることが示唆された。 IL11/IL11R/gp130/JAK2/STAT3経路の活性化をαGlcNAcが抑制しているという観点からαGlcNAc含有糖蛋白質の同定とαGlcNAc認識レクチンについて研究を進めた。αGlcNAc認識レクチンとしてTFF2が報告されているので、抗TFF2抗体を用いた免疫沈降物を対象として抗αGlcNAc抗体によるイムノブロット分析を行い、A4gnt KOマウスと比較して野生型マウスで検出される蛋白質を見出した。また抗TFF2抗体を用いた免疫組織染色では野生型マウスの幽門腺細胞に染色され、A4gnt KOマウスでは消失していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の研究結果から、5~50週齢におけるJAK2の経時的活性変化の定量解析から野生型マウスと比較して5週齢でのJAK2活性が有意に亢進していた。STAT3活性化は5-10週齢で有意に亢進するため、STAT3活性化上昇と関連していると考えられ、gp130-JAK2経路を介していることが示唆された。 抗TFF2抗体を用いた免疫沈降物を対象として抗αGlcNAc抗体によるイムノブロット分析を行い、A4gnt KOマウスと比較して野生型マウスで検出される蛋白質を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果に基づき、IL11/IL11R/gp130/JAK2/STAT3経路の活性化をαGlcNAcが抑制しているという観点からαGlcNAc含有糖蛋白質の同定とαGlcNAc認識レクチンについて研究を進めた。αGlcNAc認識レクチンであるTFF2に着目し、抗TFF2抗体の免疫沈降物を対象として抗αGlcNAc抗体によるイムノブロット分析を行った。その結果、A4gnt KOマウスと比較して野生型マウスで検出される蛋白質を見出した。この蛋白質は分子量から新規のαGlcNAc含有糖蛋白質と考えられるため、同定を試みる。 これら一連のαGlcNAc含有糖蛋白質探索から得られた蛋白質についてはαGlcNAcが結合している糖鎖がN-グリカンかO-グリカンかを確認する。さらに、αGlcNAcが結合している糖鎖の構造解析を行い、構造の特異性について検討する。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた、電気泳動関連試薬などの消耗品の購入費が少なく済んだため。本年度、計画している研究において消耗品代として使用する。
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