2021 Fiscal Year Research-status Report
Distribution and clonality of multiple intraductal neoplasms of the pancreas evaluated by morphology
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20K09070
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Research Institution | Center for Clinical and Biomedical Research, Sapporo Higashi Tokushukai Hospital |
Principal Investigator |
唐崎 秀則 医療法人徳洲会札幌東徳洲会病院医学研究所, がん生物研究部, 客員研究員 (50374806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水上 裕輔 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30400089)
小野 裕介 医療法人徳洲会札幌東徳洲会病院医学研究所, ゲノム診断研究部, 部門長 (40742648)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 背景膵 / 膵発癌素地 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌周辺の肉眼的正常膵に分布する微小膵管内病変の遺伝子変異プロファイルを取得することにより、膵発癌素地(field defect)並びに、発癌・進展・再発様式の多様性を明らかにするためには膵癌の背景の異型上皮内病変の特性を明らかにする必要があり、これまでに多くの報告がなされている。しかし、その多くは少数病変での解析である。さらに「正常」形態膵管の分子レベルでの変化については報告が極めて少ない。われわれは膵癌の背景変化を明らかにするために正常膵管も含めた網羅的な解析を試みている。顕微鏡で確認しうる全膵管の調査を究極目標として、これまでに通常型膵癌1例、IPMN由来浸潤癌1例、非浸潤性IPMN1例の切除例に対して、背景膵管の徹底解析を行った。上記症例からそれぞれ85,41,84箇所の正常膵管、異型膵管、腫瘍の異型度分類とマッピングを行いDNAを採取した。これらのサンプルの変異解析を膵癌で高頻度に変異のみられる8遺伝子を搭載した遺伝子パネルを作成してターゲットシーケンス解析を行った。1例ではより感度の高いデジタルPCRも行い、このパネル解析の結果を検証した。ここまでの中間解析で各病変間のクローン関連性を明らかにするためにはターゲットシーケンスのみでは難しいことが明らかとなったため、全エクソン解析も導入した。これに伴う方法論の試行錯誤やデータ解析面の問題解決に多くの時間が費やされたが、研究室内での安定化が得られた。しかし微小病変を取り扱う本研究の特性から、各サンプルで得られるDNA量が少ないため、またコスト的にも全エクソン解析を多用することは難しいため、特定の病変でのみ行う事にした。 今後これらのデータの論文化を目指し、各病変の異型度を複数の膵臓病理エキスパートに依頼して再評価を進めている。最終的に膵癌の背景で起こっている分子レベルでの変化と主病変とのクローン関連性を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに3例から各50~90カ所の膵管、膵管内病変、指標病変をマッピングした。主研究者がこれらの異型度を評価してスコアー化を完了している。これらサンプルからマイクロダイセクションで組織を採取してDNAを抽出した。ターゲットが小さいためHE標本では捉えられた部位が、追加切片作成段階で消失したり、DNAが十分抽出できないサンプルがいくつかあり、最終的に210サンプルでパネルによる変異解析が可能であった。異型度判定の確実性を担保するために、2人の膵臓病理エキスパート再度判定予定である。このために3例分のバーチャルスライドを作成中である。 全てのターゲットシーケンスはすでに終了している。1例で今回のターゲットシーケンスの精度を確認する目的でデジタルPCRによる検証を行い、結果の再現性を確認した。 今回の3例のうち2例に全エクソン解析を併用した。1例はIPMN由来浸潤癌か、通常型膵癌で主膵管内進展をともなうものかが形態学的に判定困難だった症例で、もう一例は同時性多発膵癌症例である。クローンの進展過程(順序)や異同を判定するのにパネル検査のみでは難しいことがわかったためであったが、全エクソン解析でもクローンの異同はわかるものの、進展順序に関しては判定の難しいケースがあることがわかった。この過程で、全エクソン解析の研究応用にはコストや必要とする検体量、さらに感度など様々な障壁があることも明らかとなった。 これまでの研究で、従来報告のない同一症例での多数の正常膵管・膵管内異型上皮の変異情報と指標病変間、あるいは指標病変と近縁膵管内病変の全エクソン変異パターンの比較情報が得られた。各サンプルの異型度スコアーの確定後に、最終的なデータ解析をして論文を完成させる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究に関してはサンプルの異型スコア確定後のデータ解析と論文化を行っていく。3例と少数例での報告となるので、3例を通じて判明したことに加えて、各症例で明らかとなった部分も論点としたい。本研究は予算的に3例と少数例での解析に終わらざるを得なかったが、今後これを踏まえて多数例での背景膵の検証を進めていきたい。ここまでの研究で、背景膵評価のための様々な問題点が明らかとなった。 まずサンプル採取に関して、今回は検鏡で病変を同定してマイクロダイセクションで組織を採取したが、これは大きな労力を要する作業であった。機械的に多数サンプルを採取する方法の検討が必要と考える。 次に変異解析方法として、今回はパネルによるターゲットシーケンスを主軸として、デジタルPCRと全エクソン解析を補助的に用いた。それぞれの検査法の長所・短所(コストや必要なDNA量、変異の検出感度)をふまえて効果的な割り振りをする必要がある。背景膵解析で全サンプルに全エクソン(あるいはゲノム)解析を用いることはコスト的にも採取できるDNA量的にも不可能である。ここをデジタルPCRやパネルでうまく補足する方法論の開発が必要と考える。 さらに膵癌の背景を明らかにするためには、膵癌だけではなくその他の膵腫瘍の背景膵解析を行い、膵癌と比較することが必要となる。 現在、症例の集積と予備検討を進めている。
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Causes of Carryover |
次年度購入予定の試薬費用に充てるため
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Research Products
(2 results)