2020 Fiscal Year Research-status Report
新規肝再生調節因子としてのReg発現制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K09072
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山本 雄造 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (70281730)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
打波 宇 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (40400486)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ALPPS / 肝再生 / Reg3遺伝子 / STAT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
Sprague-Dawley系ラットを実験動物として使用した。尾状葉、左外側葉、左内側葉、右葉 への門脈を結紮し、右内側葉への門脈流のみ温存した門脈結紮群、門脈結紮群に右内側葉内に生じた分水嶺に沿った肝実質離断をおいたALPPS群の他に、肝実質離断を置く場所を変えたときの変動を見るために、門脈結紮は同様として、肝実質離断を左外側葉においたPiLL群を作成し、術後、1,3,7日に右内側葉の重量/体重比、PCNAラベル指標にて肝の増殖能を評価した。その結果、ALPPS群でのみ抜きん出た増殖能を示す事がおさえられた。また、各群間の増殖能の差異は24時間以内に決していることが判明した。同時に検討したIL-6やTNFαは肝離断をおいたALPPS群とPiLL群では門脈結紮群よりも高いのは当然として、2者に相違はなく、増殖能がPiLL群ではALPPS群に及ばなかった事より、一般に言われているIL-6、TNFαの増加がALPPS群での増殖能の上昇の根源であるという仮説は否定された。一方、cDNAマイクロアレイで探し出したReg3α、Reg3βのタンパク発現の確認したところ、特にReg3β蛋白がALPPSモデルで強く発現しており、その発現部位は肝の門脈分水嶺に接しておいた肝離断に近接して高発現となっている事がわかった。そこで、このReg3の発現が細胞増殖能の上昇に直接関与しているかどうかを調べるためにリン酸化STAT3発現を調べるとこの部位ではリン酸化STAT3も高くなっており、Reg3βの発現がSTAT3 の活性化を介して細胞分裂を増強していることが強く示唆された。以上から、ALPPS群での特異的な肝増殖はReg3βとその後のSTAT3系の活性化を介して起こっているものであり、炎症性サイトカインの上昇は直接的な機序とはなっていないことが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予想していたように一般に言われているIL-6、TNFαがALPPS手術における急速な肝再生の根本原因ではないことがPiLL群をもうけることにより直接的に証明する事ができた。更にReg3βの発現がALPPS群の肝離断面に沿って強く、同じ肝離断面でもPiLL群では発現を見ないことから、Reg3βの発現に直接関与している証拠をつかむ事ができた。さらにはリン酸化STAT3の発現部位がReg3βの発現部位と極めて良く一致していたことから、Reg3βの発現がALPPS手術後の肝再生の増強に繋がっていることを2重に証明する事ができた。更に、思わず判明したのはALPPS、PiLL群、門脈結紮群の肝再生量の違いはラットでは術後24時間で決している事が判明し、何日も掛けてダラダラと起こっているものではないことであり、これはALPPS手術の二期目の手術後の肝再生を考える上で極めて重要なヒントとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究はほぼ研究計画時の推測通りの結果を得られているため、予定通りにIL-6-JAK/STAT3 axisに関する検討を進める予定である。JAK inhibitor投与がReg発現にどのような影響を及ぼすかも検討する。JAK/STAT3の活性剤とされる薬品の投与がPVL群やPiLL群での再生率をさらに高められるかも検討したいと考えている。また、術後どの時点でのReg発現が最も強いかを検討し、どの時点でReg発現が消失するのかを時間軸を伸ばして検討したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
2020年度はアッセイ用の消耗品購入費を節減することができたことと、コロナ禍のため学会がweb開催になり旅費の支出がなかったため、予定よりも20万円支出を抑えることができたが、2021年度の研究計画には多くの費用を要すると予想されるためこの分は2021年度予算と合わせて使用する。
|