2020 Fiscal Year Research-status Report
CyTOFによる大腸腫瘍浸潤CD4+FOXP3+細胞の解析と予後因子としての役割
Project/Area Number |
20K09079
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
吉田 晋 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60554805)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
硲 彰一 山口大学, 医学部, 教授(寄附講座等) (50253159)
鈴木 伸明 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50526910)
友近 忍 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (30403679)
徐 明 山口大学, 大学院医学系研究科, 学術研究員 (40645503)
中上 裕有樹 山口大学, 医学部, 学術研究員 (30843304)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 大腸癌 / 腫瘍浸潤リンパ球 / マスサイトメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、大腸癌においてCD4陽性細胞とFOXP3陽性細胞の腫瘍浸潤が共に少ない症例で有意に予後不良であったことを報告した(Kuwahara T, Hazama S, et al:Br J Cancer 2019)。しかし、これらの細胞機能については未だ不明であり、それを解明することが本研究の目的である。具体的な方法は、①腫瘍浸潤CD4+およびFoxp3+T細胞の役割を解明するために新規症例を集積し、マスサイトメトリー(CyTOF)による染色、標的細胞抽出のためのゲーティングを行う。②大腸癌組織のCD3/CD8/CD4/Foxp3陽性T細胞数を算出するために免疫染色を行う。以下に、令和2年度に実施した研究の成果を記載する。
症例の集積は1年間で15例に達し、順次CyTOFによる染色と標的細胞抽出のためのゲーティング、免疫染色を行っている。 腫瘍微小環境と末梢血サイトカインとの関連に関する追加研究 目的:大腸癌の新規免疫抑制因子を探索する目的で、腫瘍微小環境と末梢血免疫状態との関連を解析した。対象:1993~2012年に根治手術を行った大腸癌209例。方法:①末梢血サイトカイン測定(術前末梢血を用いてIL-1βとIL-6をELISA法で測定する。②免疫染色(切除標本を用いてIL-1βとIL-6の発現を確認する)。③腫瘍浸潤リンパ球(TIL)数の測定(免疫染色を用いて、CD3+, CD8+, CD4+, Foxp3+ 細胞数をそれぞれ測定する。結果:IL-1βとIL-6の末梢血清濃度は、腫瘍細胞でのその発現と相関を認めなかったが、腫瘍間質細胞での発現と相関を認めた。また、腫瘍細胞でIL-6が高発現している症例では、TIL(CD4+,Foxp3+ 細胞)数が有意に少なかった。この結果は、腫瘍浸潤CD4+およびFoxp3+T細胞の役割を解明する上で重要な知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象症例の選択については手術カンファレンスで確認した上で行っているため、症例の取りこぼしはなかった。しかし症例集積目標は2年間で50例としているが、当該年度までの達成率は30%(15例)とやや低かった。コロナ禍による大腸癌手術症例の減少と術前化学療法(NAC)症例の増加(局所進行癌に対してはNACの方針としているが、NACにより大腸癌が縮小し、組織標本の採取が困難になることが多い)がその原因と考えられた。一方で、対象症例の選択、承諾書取得→標本採取→CyTOFによる染色、標的細胞抽出のためのゲーティング、免疫染色までの流れはほぼ確立された。加えて、スタッフのスキルアップにより今後はよりスムーズに症例集積が進むと考えられる。また、腫瘍浸潤リンパ球の細胞機能を解明する上で、腫瘍微小環境と末梢血サイトカインとの関連性については以前より注目しており、追加基礎研究によって重要な知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は症例集積を増やし、順次CyTOFによる染色、標的細胞抽出のためのゲーティング、免疫染色を行う。例年通りの大腸癌手術症例数であれば、令和3年度で目標症例数(50例)に達成することは可能であるが、コロナの影響による手術症例数減少に関しては今後も予測不能である。目標に達しない場合は、次々年度まで症例集積を延長するか目標症例数を減らして検討することなどを考慮している。
|
Causes of Carryover |
コロナの影響で大腸癌手術症例自体が減少したことにより、症例集積が予定通り進まなかったことが主な原因であると考えられた。それにより購入予定であった物品(免疫染色およびCyTOFの抗体、CyTOF buffer、プラスチック製品など)の消費量が予定より少なくなった。また、研究室改修工事があり当該年度の業務用プリンターの購入を見合わせていた。当該助成金は、次年度に症例集積が増えることで発生する追加物品と業務用プリンターの購入費として使用する予定である。
|