2021 Fiscal Year Research-status Report
癌関連線維芽細胞におけるC5a受容体を標的とした膵癌幹細胞制御
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20K09081
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
新田 英利 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (90555749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 克憲 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (60555746)
林 洋光 熊本大学, 病院, 助教 (80625773)
山村 謙介 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (10816507)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 補体C5a / C5a受容体 / 癌間質細胞 / 膵癌幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
補体C5aおよびその受容体であるC5a受容体(C5aR)は細菌感染以外にも関節リウマチ、 敗血症、肺炎、動脈硬化、白血病を増悪させる因子として注目されている。われわれは世界で初めてC5aRがヒトの固形癌(胃癌、膵癌、胆管癌、大腸癌など)にも発現しており、癌の浸潤・転移を促進させていることを明らかにした。また膵癌においてCancer Associated Fibroblasts(CAFs)は癌の浸潤・転移に関与しているこが明らかとなりつつあり、さらに癌組織中の間質中に存在するCAFsが C5aRを新たなマーカーとして発現し、肺癌や乳癌において癌幹細胞の機能維持に役割を果たしていることが示された。よってC5aRはCAFsを介した癌の浸潤に重要な働きを有している可能性がある。最近、肺癌・乳癌のCAFsは自身の細胞膜に発現したC5aR(GPR77)とそのリガンドであるC5aを細胞膜上で反応させることで p65リン酸化、NF-κBを活性化し炎症性サイトカイン(IL-6,8)を分泌し癌幹細胞の機能維持や乳癌の制癌剤耐性に重要な役割を示していることが明らかとなった。 膵癌においても癌幹細胞は制癌剤耐性に寄与していることから、C5a-C5aRを治療ターゲットとすることで癌幹細胞を制御し新たな膵癌治療につながる可能性がある。以上から癌組織から抽出したCAFsはC5aRを介してさまざまなサイトカインを分泌し癌の進展や制癌剤耐性あるいは癌幹細胞の機能維持を介して予後を悪化させている可能性があるが、果たして膵癌においてCAFsがC5aRを介した癌進展・制癌剤耐性に寄与しているかは明らかではない。C5aRを発現した膵癌細胞をターゲットとするだけでなく、CAFs上に発現したC5aRあるいはCAFsから分泌されるC5aをターゲットすることで新たな癌治療の道を切り開く可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト膵癌組織を用いてC5aR抗体およびαSMA抗体を用いて蛍光二重染色を用いた結果、CAFsがC5aRを発現していることが確認できた。かつ共焦点顕微鏡においてもαSMA陽性CAFsがC5aRを発現していることが確認できた。また臨床病理学的にもC5aR陽性かつαSMA陽性細胞を高率に発現する膵癌症例は低率に発現する症例にくらべ癌の進行度が高く、予後不良であることがわかった。さらに樹立したCAFs細胞株を用いてRT-PCRおよびWestern blottingを行いC5aRの発現を確認できた。CAFsにC5aを加えた際、αSMAの発現の増加を認めたことからC5aR陽性CAFsにおいてC5aと反応することでactivateされることが示唆された。さらにC5aで刺激したCAFsとCancer cellを共培養することでCancer cellの浸潤能が高まることがinvasion assayで示された。C5aで刺激したCAFsが膵癌幹細胞のsphere形成能を有するかについて解析したがsphere形成能については同定はできなかった。現在C5aで刺激したCAFsがどのようなメカニズムで癌細胞の浸潤能を亢進させているかサイトカインアレイを用いて検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
C5a刺激によるCAFsの活性化を介した膵癌のstemness発現ははっきりしなかった。一方でCAFsはC5a-C5aRを介して癌細胞の浸潤能を高めていることから、CAFsはなんらかのサイトカインを分泌することで浸潤能を高めている可能性がある。今後はサイトカインアレイを用いてその原因物質を解析し、さらにC5aR antagonistがそれら原因物質の産生を抑制するかについて解析する。可能であればin vivoでの癌細胞転移抑制モデルで検証したい。
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Causes of Carryover |
理由:試薬、消耗品については、医局内保管のものを使用することができた。また、旅費については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により学会開催形式がハイブリッド開催へ変更となる事が多く出張が減った為、未使用額が生じた。
使用計画:試薬、消耗品の購入及び研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたい。また、最新の研究情報を得るため、及び、研究成果発表のための学会出張旅費にも充てたいと考える。
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