2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the regulatory mechanism of liver resident NK cell function through aortic calcification factor (apolipoprotein E)
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20K09104
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大平 真裕 広島大学, 病院(医), 助教 (30397947)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | NK細胞 / 肝臓 / 肝細胞癌 / ApoE / 石灰化 / TRAIL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大動脈石灰化がアポリポ蛋白E(ApoE)を介して肝内在性ナチュラルキラー(NK)細胞の抗腫瘍活性に与える影響を明らかにすることである。大動脈石灰化は、脂質代謝を司るApoE機能異常と関連し、心血管合併症のみならず外科手術後の合併症や癌再発に関与する。我々はこれまで、肝内在性NK細胞が強力な抗腫瘍活性を持ち、肝臓切除後や肝移植後の肝内免疫で重要な役割を果たすという知見を得た。 本研究では、大動脈石灰化マウスモデル(ApoE KO)を用いて、肝切除及び肝転移モデルにおける肝内在性NK細胞機能及び肝内因子とApoEとの関連を解析する。さらに、臨床サンプルを用いてApoEと肝内免疫、予後との関連を解析する。 肝臓移植ドナーの大動脈石灰化の有無で2群に分け、移植肝灌流液中のNK細胞活性を解析した。大動脈石灰化群では、IL-2による3日間の刺激培養後に抗腫瘍分子TRAIL発現が低石灰化群と比較して有意に低下していた。この結果より、大動脈石灰化が、脂質代謝のホメオスタシスを司るApoEを介して肝臓内の抗腫瘍免疫を低下させ腫瘍増大に寄与している可能性が示唆された。 また、ApoE KOマウスを用いた解析では、B6 wild typeマウスと比較して、肝臓内のNK細胞の割合が低下していた。特に、肝内在性NK細胞のマーカーであるDX5-NK細胞の割合が減少していた。さらに、抗腫瘍分子TRAIL発現の低下及び早期活性化マーカーであるCD69の発現低下を認め、肝癌腫瘍株Hepa1-6に対する細胞障害活性が有意に低下した。 引き続き、大動脈石灰化が肝内在性NK細胞の抗腫瘍活性及び肝内腫瘍増殖に与える影響・分子学的メカニズムを解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、大動脈石灰化が肝臓内免疫、特に肝内在性NK細胞の抗腫瘍活性にApoEが与える影響を解析し、その制御機構を解明することである。 肝臓移植ドナーを対象として大動脈石灰化が肝臓内NK細胞活性に与える影響を解析する計画。大動脈石灰化群は、IL-2刺激後の肝内在性NK細胞の抗腫瘍分子(TRAIL)発現が有意に低下していることが明らかとなった。 脂質代謝のホメオスタシスを司るApoE機能不全による大動脈石灰化マウスモデル(ApoE KO)の購入を計画。購入手続き、搬入手続き行い入手後に、順調に繁殖が進んでいる。研究計画書に従い、ApoE KOマウスの肝内在性NK細胞の形態や機能解析を開始できている。 以上より、概ね順調に研究は進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き大動脈石灰化マウスモデル(ApoE KO mice)を用いて、大動脈石灰化が肝内在性NK細胞のフェノタイプ、機能に与える影響の解析を継続する。本研究により、大動脈石灰化モデルの肝内在性NK細胞の表現型や抗腫瘍活性におけるApoEの制御機構が明らかとなる。 さらに、マウス肝切除、肝転移モデルを用いて、ApoEが肝内在性NK細胞の抗腫瘍活性及び肝腫瘍増殖に与える影響を解析する。また、肝癌腫瘍株のApoEノックダウンによる腫瘍増殖能、浸潤能を評価する。本研究により、ApoEが肝切除、肝転移に関与する因子が明らかとなる。 約200症例の肝癌組織サンプルを用いて、大動脈石灰化と肝組織ApoE、肝臓内NK細胞のフェノタイプ解析、細胞傷害性解析、予後因子との関連について解析する。ApoEの一塩基多型と大動脈石灰化、予後との関連についても解析する。本研究により肝癌肝切除の臨床におけるApoEと肝内在性NK細胞の役割が明らかとなる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍であり学会参加費用を含めた旅費が不要となったため。次年度以降研究計画として必要な物品・消耗品(マウス飼育費、フローサイトメトリー抗体、実験用プラスチック製品等)に使用した。ほぼ予算額を使用できているが、1万円以下の端数が残額となった。
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Research Products
(9 results)