2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K09150
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古山 正 九州大学, 大学病院, 講師 (00419590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 拓也 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (20374168)
森崎 浩一 九州大学, 大学病院, 助教 (30625801)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腹部大動脈瘤 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、腸内細菌自体がマクロファージを介して、動脈壁内に蓄積し、血栓形成や動脈壁の脆弱性を来しているのではないか、ヒト腹部大動脈瘤壁や血栓に腸内細菌が存在するのではないか、また、その到達経路として動脈血が考えるのではないかと考えた。 まず、腹部大動脈瘤に対して開腹人工血管置換術を施行する症例の臨床情報(年齢、性別、既往歴、手術歴、検体検査結果等)を得て、術前に便を、手術の際に清潔操作下に動脈血、大動脈瘤血管壁、血栓を採取した。採取した瘤壁および血栓は生理食塩水で洗浄し付着血液を除去した後に、RNA固定化処理を行い、-80℃にて冷凍保存した。RT-PCRおよび次世代シークエンサーにより細菌の検出(動脈血・瘤壁・血栓)・腸内細菌叢の解析を行った。 30症例中、19症例(63%)の動脈血および11症例(37%)の動脈瘤壁から腸内細菌が検出された。血栓から腸内細菌は検出されなかった。動脈血と動脈瘤壁の両方から腸内細菌が検出された症例は8症例で、うち2症例は同一菌種であった。 動脈血から腸内細菌が検出された群は有意に単球の比率が高かったが、動脈瘤壁から腸内細菌が検出された群は動脈瘤の内、血栓が占める割合が有意に高かった。腸内細菌叢の主要構成菌種であるFirmicutes門とBacteroidetes門の比であるF/Bratioは、増加しており、動脈瘤症例でdysbiosisが生じていると考えられた。また、動脈瘤症例にはエンテロタイプⅢの割合が高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腹部大動脈瘤の血管壁から高感度RT-PCR法で初めて細菌を検出した。動脈瘤患者の血液からの細菌検出率(63%)は既報の健常者(4~7.5%)や糖尿病患者(28%)の検出率より高く、関連性が示唆された。動脈瘤の血栓が多いと破裂リスクが高まるとの報告もあり、血管壁検出群では血栓量が多く、破裂リスクが高い可能性が示唆された。今回のRT-PCRでは、プライマーのある菌種の解析に限られるため、その他の菌種も検出される可能性がlimitationとして挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
検出された菌種としては、ヒト腸内の主要菌種で偏性嫌気性菌のClostridium coccoides、Clostridium leptum、Bifidobacterium、比較的高い菌数で検出される通性嫌気性菌のLactobacillus gasseri、 Lactobacillus casei、Lactobacillus ruminis等のいわゆる善玉菌が検出された一方、化膿性複数菌感染症の3大分離菌であるAtopobium、Prevotella、皮膚等にも常在するStaphylococcus、口腔内にも常在するStreptococcus、腸内常在の偏性嫌気性菌で毒素や酵素を作り出しガス壊疽や食中毒原因菌であるClostridium perfringens(ウエルシュ菌)も検出された。これらと症例の背景の差を観察する。 腸内細菌の産生する短鎖脂肪酸(酢酸・酪酸・プロピオン酸など)が脂質代謝への作用や免疫細胞への作用により心血管疾患に関与することが示唆されている。コリンやL-カルニチンの腸内細菌代謝産物であるTMAO(trimethylamine N-oxide)は マクロファージの泡沫化増加やコレステロール逆転送系抑制などを介して動脈硬化へ関与すると言われているため、30症例のTMAOを測定し、腸内細菌検出との関連を調べる。
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