2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K09150
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古山 正 九州大学, 大学病院, 講師 (00419590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 拓也 独立行政法人国立病院機構福岡東医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構福岡東医療センター臨床研究部, 血管外科医長 (20374168)
森崎 浩一 九州大学, 大学病院, 助教 (30625801)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腹部大動脈瘤 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年8月から2019年4月までに腹部大動脈瘤に対して動脈瘤切除人工血管置換術を施行した30例(男:女=14:1、年齢67.8±6.6歳)を対象とし、手術中に採取した腹部大動脈瘤の瘤壁、瘤内血栓および血液からRNAを抽出し、そのRNAを標的として、22種類の菌群、菌種特異的プライマーを用いたRT-PCRにより細菌を検出・定量した。同症例で術前に採取した便の菌叢解析を次世代シーケンサ(MiSeq)で行った。その結果、大動脈瘤壁11検体/30検体(37%)、血液19検体/30検体(63%)においてヒト腸内の主要菌種で偏性嫌気性菌のClostridium coccoides、Clostridium leptum、Bifidobacterium、比較的高い菌数で検出される通性嫌気性菌のLactobacillus gasseri、 Lactobacillus casei、Lactobacillus ruminis等のいわゆる善玉菌が検出された。一方、化膿性複数菌感染症の3大分離菌であるAtopobium、Prevotella、皮膚等にも常在するStaphylococcus、口腔内にも常在するStreptococcus、腸内常在の偏性嫌気性菌で毒素や酵素を作り出しガス壊疽や食中毒原因菌であるClostridium perfringens(ウエルシュ菌)も検出された。瘤壁検出例では大動脈瘤内血栓の割合が高く、血液検出例では血液中の単球割合が高く、リンパ球割合が低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織中の細菌検出方法で最もコンタミネーションが起こりにくいRT-PCRを用いて22種類の菌群を検討した結果、63%の血液、37%の動脈瘤壁から細菌が検出され、手術適応となったAAA患者において高頻度にBTが起こっていることが証明され、AAAの発生・進行と腸内細菌との関連性が示唆された。また、血管壁から検出された細菌は、臨床で病原性を示すものが多く、腹部大動脈瘤形成への炎症反応の影響が考えられた。血中短鎖脂肪酸、血中TMAO値と細菌検出との関連は認められなかった。α-diversityと細菌検出との関連は有意差が無かったが、p=0.067であったため、今後の検討課題であると思われた。
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Strategy for Future Research Activity |
30例の術前、術中、術後因子と腸内細菌の種類、動脈瘤壁の血栓量、血栓の性状などの関連性を検討し、腸内細菌が動脈瘤形成に果たす影響を見いだす。また、腸内細菌のさらなる解析(Unifranc解析、PCoA解析)を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた腸内細菌の解析の実験が当該年度では終了しなかったため、次年度行うために必要な試薬などを次年度繰越金50,000円で購入する。
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