2023 Fiscal Year Research-status Report
人工知能とメタボローム解析を用いた肺癌の新規診断方法の開発
Project/Area Number |
20K09171
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
梶原 直央 東京医科大学, 医学部, 教授 (70343514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 昌弘 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 教授 (30458963)
池田 徳彦 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (70246205)
垣花 昌俊 東京医科大学, 医学部, 准教授 (90366112)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺がんの早期発見のためには、高精度で低侵襲なスクリーニング方法の開発が必須である。本研究では、低侵襲に採取可能な体液(血液等)でマーカー探索を実施することを目的として、手術時に採取した組織検体も解析し、組織で起きている代謝異常と整合性がとれるマーカーを絞り込むことを行いました。 これまでの研究では肺癌患者 (n = 109 ペア) から採取した血漿および唾液サンプルだけでなく、隣接する非がん組織のメタボローム プロファイルと比較したがん組織のメタボローム プロファイルの分析を実施しました。 更に対照参加者 (それぞれ n = 83 と 71) から収集した血漿と唾液のサンプルを分析しました。 親水性代謝物を包括的に定量するために、キャピラリー電気泳動 - 質量分析法および液体クロマトグラフィー - 質量分析法が実行されました。 ペアの組織を比較したところ、53 の大きく異なる代謝産物が明らかになりました。 血漿と唾液では、患者と対照の間でそれぞれ 44 個と 40 個の有意に異なる代謝物が示されました。 これらのうち、12 の代謝産物は 3 つの比較すべてで有意な差を示し、主にポリアミン経路とアミノ酸経路に属していました。 N1-アセチルスペルミジンは最も高い識別能力を示しました。唾液データは、トレーニング データセットと検証データセットにランダムに分割されました。 受信機動作特性曲線の下の面積は、トレーニング データを使用した相互検証では 0.744、検証データでは 0.792 でした。 このモデルは、他の代謝産物よりも N1-アセチルスペルミジンに対して高い識別能力を示しました。 これらの結果は、血漿組織と肺組織の両方で一貫して異なる唾液バイオマーカーが非侵襲性肺がんスクリーニングを容易にする可能性があることを示唆しています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでにキャピラリー・電気泳動質量分析装置(CE-MS)による水溶性物質の網羅的解析と、ポリアミン類の液体クロマトとグラフィー・質量分析装置(LC-MS)による高感度な測定により、幅広いPathway上の代謝物を定量した。ポリアミン類も水溶性代謝物ではあるが、CE-MSの前処理時に遠心する素材に吸着して回収率が低下するために、これらの処理を必要としないLC-MSの方法を採用した。組織検体と体液検体の間で整合性のとれる変化をした物質を絞り込み、alternatie decision tree(定量的決定木)を用いた識別モデルの開発も行った。評価試験はクロスバリデーションを実施し、汎化能力の評価も実施した。単なる体液の網羅的な解析だけでなく、組織検体との比較や、様々な臨床情報との解析を行うことで、肺癌における特異的なマーカーの解析を行った。現在、様々な臨床情報との解析を行うことで、肺癌を早期に検出だけでなく、予後における個人差の違いも解析中であり、将来的に個人ごとに必要な治療方針を予測する「先回り医療」のシステムを確立する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに測定したデータの解析を実施し、第一段階の論文は発表された。現在、予後に関するデータを解析して、第2段階医の論文の執筆を進めている。様々な臨床データの情報によって、代謝物マーカーの物質がどのような影響を受けるのかを調べ、5年後の予後のデータも収集し、組織検体の中でみられている代謝の異常が予後を予測しうるか等も解析している。 個々の分子のマーカーを1つの変数として、機械学習と組み合わせるだけでなく、Pathway単位での変動を1変数として、識別能力があげられないかなど様々な手法やデータの扱い方を変えながら、精度のよい数理モデルを開発することをおこなう。
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Causes of Carryover |
本年度は機械学習(人工知能)の学習に大部分時間を要し、データを纏めて論文作成し、途中から予後等の臨床データも解析されたことで、研究成果の2本目の予後を含めた最終的な論文執筆まで実施できなかった。次年度は、予後解析によってマーカーの候補となるものは評価分析試験を追加して再現性を確認するとともに、予後に関するデータ解析を終了させ、最終的な研究成果の発表、論文作成に予算を使用する。
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Research Products
(8 results)