2021 Fiscal Year Research-status Report
肺腺癌のATP代謝経路を標的とした新規治療戦略の開発
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20K09177
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
見前 隆洋 広島大学, 病院(医), 助教 (00634081)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん代謝 / 酸化的リン酸化 / Glycolysis / Oxphos |
Outline of Annual Research Achievements |
TCGAデータベースを用いて、肺腺癌症例におけるGlycolysis関連としてHIF1aの下流分子群、OXPHOS関連としてAMPKの下流分子群それぞれの遺伝子発現のパターンに沿ったクラスタリングを行い、がん代謝性質別に分類を行なった。 現在Glycolysis型とOXPHOS型に分類できることが分かり、このタイプ別に治療開発が可能ではないかと推察される。 一方で、いずれのタイプの特徴も持ち合わせたような腫瘍が存在することも分かった。 手術より得られたヒト肺腺癌症例のホルマリン固定パラフィン包埋より得られる薄切切片検体を用いた免疫組織学的染色は、がん代謝関連分子(HIF1a, UCP2, PPARg)に対する免疫染色作業が進んでいる。癌の悪性度や患者さんの予後のデータ、遺伝子変異のデータなどと合わせて、代謝の型と臨床病理学的背景との関連を検討しており、染色の評価として、肺癌の浸潤成分変異や非浸潤成分それぞれにおけるタンパク発現パターンも含めて分類を行っているGlycolysisの阻害には2-DGを使用し、酸化的リン酸化を標的とした阻害にはミトコンドリア呼吸のうち、complex IやVを標的とした薬剤を使用した。 肺腺癌細胞株もがん代謝関連分子の遺伝子およびタンパク発現パターンにより代謝の型が分類可能であった。これら分類された細胞株を用いた優位がん代謝を標的とした治療薬の効果に関して一定の抗腫瘍効果が認められている。 特にミトコンドリア呼吸(特にComplex V)を標的とした薬剤に感受性の高い細胞株では正常細胞株では増殖が抑えられないような非常に低濃度でも抗腫瘍効果が認められている。また、複数の細胞株で同様の傾向が確認されていることから、有害事象が抑えられた治療開発へつながると考えている。これらの抗腫瘍効果とがん代謝関連分子の発現パターンとの関係を現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RNAシークエンスが行えていない点は遅れていると言える。 その他の点はヒト検体での免疫染色などは施行しているものの抗体の選出や条件決定にやや難航し、全体としてやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト肺腺癌症例における免疫染色は、がん代謝関連分子に対する免疫染色作業が概ね終了してきており、臨床病理学的所見との関連を検討を深める。 肺腺癌細胞株を用いたがん代謝を標的とした治療薬に関して今後のin vivo(PDX modelなど)への応用を考えている。 また、優位代謝とその代謝を標的とした阻害薬の効果との関連を調べる予定。 ひとまずはここまでの段階をまとめて論文などで報告を計画している。
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Causes of Carryover |
昨年度同様にCOVID-19の影響で予定していた学会や研究会などがweb開催となり、予定していた旅費が不要となった。 次年度以降もCOVID-19の状況を踏まえて、継続するようであればさらに旅費の予定は縮小し、実験関係物品費用によりシフトして計画をたて、使用させていただく予定である。
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