2020 Fiscal Year Research-status Report
バーチャルリアリティー(VR)を活用した麻酔科患者接遇改善研究
Project/Area Number |
20K09194
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
宮部 雅幸 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (60145589)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
境 倫宏 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (10448681) [Withdrawn]
坂本 良太 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (10581879)
島岡 要 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40281133)
亀井 政孝 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (60443503) [Withdrawn]
伊藤 亜紗実 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (80740448)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | バーチャル・リアリティー / VR / 拡張現実 / AR / 医学教育 / 慢性疼痛 / ウェアラブル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、医療界でバーチャルリアリティ(VR)が導入されはじめている。例えばVRを利用した「医用画像解析による手術支援」や「手術トレーニング・シミュレーションおよび医学教育への活用」が代表的である。最近では、医師側の医療技術改善だけでなく、患者側の痛みの緩和目的のVR開発や手術待機患者の全身麻酔導入のシミュレーションVR動画などが開発されYouTubeでの一般公開も行われている。しかし、VR技術を患者医師間の接遇改善のために活用する取り組みに関してはまだ行われた例はない。 手術を受けることは患者の人生の中でも非常にストレスの多い出来事である。麻酔と手術は非常に不安を誘発することが証明されており、手術前のケアとして患者に麻酔および外科手術に関するビデオや画像のPowerPointプレゼンテーション“hospital journey”を事前に見せることで不安軽減を試みている。このように患者側の不安を取り除くアプローチが行われているが、医師側の接遇自体を改善する取り組みは行われていない。そこで、我々は患者が手術室入室後から麻酔導入されるまでの一連の過程における麻酔科医の接遇を研究対象とすることにした。 本研究では麻酔従事者教育プログラム開発によって麻酔科医の麻酔導入時患者接遇向上の系統的教育法を確立させることを目指し、360度カメラを用いた麻酔導入時の患者目線のVR撮影が麻酔科医の接遇向上にどのような影響を与えるかを科学的に検証する。 またVRやARなどのバーチャルな環境を効率的に使用することにより、感染症対策を十分に行いつつも、医学教育を確実に実行できるような取り組みを推進するための基礎的な知見を獲得することを目的とする。また既存のVR技術(AppliedVR等)との比較検討を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床研究プロトコール「バーチャルリアリティ(VR)を用いた、患者目線経験による医療接遇プログラム:臨床麻酔クリニカルクラークシップ患者コミュニケーションへの応用」を作成し、倫理委員会による承認を得た。研究計画の詳細を決定した。研究デザインとしては医療従事者(初期研修医)と医学生を対象とした360度カメラによる教育手法を用いた接遇向上を比較する介入研究(前向き、単一群、非盲検)とした。麻酔科にて臨床実習を行う医学生を対象に、全身麻酔導入時の患者接遇を360度カメラで撮影する。患者目線になったように現実的体験を可能とするVRヘッドセットを用いて、360度映像を視聴し、評価指標Explanation and Planning Scale (EPSCALE) に回答する。ただし、Planning部分は本研究にそぐわないためExplanation部分だけを使用する。その後、看護師がファシリテーターとなり、医学生(1グループ)と麻酔科医による全身麻酔導入時の医師患者接遇改善についてディスカッションを行う。そのディスカッション結果を元に再度撮影とアンケート回答を実施し、接遇改善プログラムの妥当性を評価する。統計解析にはウィルコクソンの符号順位検定を用いる。このような実施計画を確定した。 さらに比較するテクノロジーとして、米国で慢性疼痛治療のオプションとして臨床応用が計画されているAppliedVRのリラクセーションVRプログラムを使用するための、パイロット研究を行った。またウェアラブルを利用した生体情報を獲得するためのパイロット研究を行った。さらに、VRを用いた医学教育プログラムのプロトタイプとして、OSCEを意識したCPR(心肺蘇生手技)の経験ができるプログラムを作成し、ボランティアでのテストを行い、フィードバックを得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方向性としては、麻酔科医の接遇に関して患者からのフィードバックを得ることは困難であるため、手術室での全身麻酔シミュレーションとVR(バーチャル・リアリティ:仮想現実)やAR(オーグメンティッド・リアリティ:拡張現実)を用いることにする。シミュレーション時に患者目線映像を360度カメラで撮影し、被験者本人が自分自身の手技をVRヘッドセットを用いて患者目線で振り返る。VRヘッドセットを用いることで、従来のロールプレイングなどの手法とは異なり、より現実に近い患者目線を疑似体験することが可能となり、効果的に自身の接遇を改善・向上できると期待される。また、これまで系統だった麻酔科医の教育プログラムは存在せず、VRを用いた接遇教育も存在しない。よって、本研究はVRを用いた医師患者コミュニケーション改善プログラムの第一歩となる。特に我々が目指す改善プログラムは、被験者各々の接遇を360度カメラで撮影し、その場でフィードバックできる個別化プログラムを作成する。最近になって、救急分野でのVRを用いた教育システムがJolly Good Incより商業ベースで利用可能になったので、救急VRのコンテンツを対象レファレンスとして使用する。救急VRを実際のクリニカルクラークシップ現場で使用し、その効果を評価するための方法を確立する。VRのまれな副作用の一つであるVR Sickness(船酔いに似た症状)の発生頻度についても前向きに記録をする。新型コロナウィルス感染症対策を兼ねて、機器が顔に触れる部分を覆うようなマスクを使用し、VRゴーグルのクッションを交換するようなプロトコルを導入する。またマイクロソフトのHoloLenseを使ったARを活用した医学教育プログラムを比較対象として検討する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大により、臨床研究実施が遅れたため、次年度使用が生じた。新型コロナウィルス感染症拡大状況であっても実施可能な計画として、AppliedVRのVR機器を用いた比較対象の検討を中心に研究を推進する。
|