2021 Fiscal Year Research-status Report
Mitochondrial protection in cardiomyocytes by thiosulfate
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20K09198
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
徳田 賢太郎 九州大学, 大学病院, 助教 (10419567)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤星 朋比古 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20336019)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チオ硫酸 / ドキソルビシン / ミトコンドリア / 心筋障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗癌剤ドキソルビシン投与は、酸化ストレスによって用量依存性に心筋障害を生じる。本研究代表者は以前の研究において、硫化水素代謝産物であるチオ硫酸が 抗酸化作用や抗アポトーシス作用を有し、ドキソルビシン誘導性心不全マウスにおいて心筋保護作用を有することを報告してきたが、そのミトコンドリア機能に 対する影響に関しては解明できていない。本研究では、ドキソルビシン誘導性心筋障害に対してチオ硫酸がミトコンドリアを介した心筋保護効果を発揮するとい う仮説を立て、その作用メカニズムを解明することを目的とする。そのため本研究では、ドキソルビシン誘導性心不全モデルマウスおよび培養心筋細胞を用い て、以下の2項目を解決する:(ア)ドキソルビシンが心筋細胞のミトコンドリア機能に及ぼす影響を検討する。(イ) 心筋細胞内チオ硫酸レベルの変化が、ド キソルビシンによって障害された心筋細胞のミトコンドリア機能に与える効果を検討する。 令和3年度は引き続き培養心筋細胞(ラット心筋由来H9c2細胞)を用いた実験系の確立を目指した。ドキソルビシンおよびチオ硫酸ナトリウムで処理した培養心筋細 胞において、ミトコンドリア機能がどのように保護されるかを評価することを計画した。現時点では、心筋細胞障害を生じるドキソルビシンの濃度、およびそれ を抑制するチオ硫酸ナトリウムの濃度など、条件を検討している。ドキソルビシン0, 0.1, 0.5, 1, 2.5, 5micro-M、およびチオ硫酸ナトリウム0, 0.1, 0.5, 1mMの濃度での細胞の生存率を水溶性テトラゾリウム塩 WST-8を発色試薬として用いて検討した。培養心筋細胞H9c2に対してDOXは用量依存性に毒性を発揮するモデルを作成することに成功した。しかしながら現時点でチオ硫酸ナトリウムによる培養心筋細胞保護効果は証明できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイする感染症の蔓延に伴い、実験施設の使用及び実験自体への高度な時間的空間的制限が生じており、特に in vivoでの実験系においては当初の計画より大幅に遅れを生じている。in vitro実験系においては心筋細胞障害を生じうるドキソルビシン濃度は確立できたが、チオ硫酸ナトリウム塩による心筋保護効果はまだ確認できておらず、その濃度等の条件を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実験モデルとして半ば確立できたin vitro実験系での条件検討を進め、本研究課題のテーマであるドキソルビシンおよびチオ硫酸の心筋細胞ミトコンドリアへの効果について検 討を重ねる計画である。またin vivoでの実験系も立ち上げ、ミトコンドリア機能に関するアッセイ(DNP-MRIを含む)in vivo解析を実施する予定としている。 特にDNP-MRIを用いたin vivo解析は開発されて間もない技術であり、ドキソルビシン誘導性心筋障害におけるミトコンドリア機能障害を評価した報告はまだな い。安定した結果を得るためには撮像条件から検討する必要がある。ただしコロナ禍によって研究に大幅な制限が引き続き生じるようであるならば、in vitroでの研究に絞って発展させていくこともいよいよ考慮しなければならないと考えている。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、新型コロナ肺炎流行にともない本学施設利用制限がかかったため研究に多大な影響があった。当初の計画に大幅な遅れが生じ、令和3年度に行う 予定であった実験の一部は実施できず、次年度以降に遅らせざるを得なくなった。そのため次年度使用額が発生した。 最終年度である令和4年度は、当初令和2年度に計画していた実験および令和3年度に計画していた実験を実施し、遅れを取り戻す予定にしている。そのため生化学的実験に使 用するアッセイキットなども購入する予定である。また、得られる予定の知見は国内外の学会で発表する予定であり、そのための旅費も計上している。ただしコロナ禍による実験施設使用制限等如何によっては計画をさらに変更する必要が生じる可能性も残される。
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