2022 Fiscal Year Research-status Report
周術期合併症に関する予測因子の基礎的検討-スピンメタボロミクスの臨床応用
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20K09200
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
新宮 千尋 大分大学, 医学部, 准教授 (30295191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳丸 治 大分大学, 福祉健康科学部, 教授 (40360151)
松本 重清 大分大学, 医学部, 准教授 (90274761)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スピンメタボロミクス / 周術期合併症 / NMR / ESR |
Outline of Annual Research Achievements |
周術期における合併症(医療過誤によるものは除く)は、生命予後に関わるものから生活の質に関わるものまで様々であり、その発生も術前よりある程度予見できるものから、偶発症のように予測しにくいものまで様々である。施設によりルーチンの術前検査の数や種類は異なるが、術前危険因子の多い患者ではかなりの数の検査を施行することとなり、またそれに伴い手術に至るまでに長期間を要することとなる。しかし診療群分類包括評価(DPC)の導入により、充分な術前検査は制限せざるを得なくなったが、高齢化社会に伴う患者の術前危険因子の増大や訴訟社会化による医療訴訟の増加といった相反する問題に臨床の現場は直面している。 メタボロミクスは生体内の代謝産物を網羅的に解析することが可能であるが、従来は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)などによる解析が必要となるため、臨床、特に急性期医療における応用は困難であると考えられる。しかし、核磁気共鳴法(NMR)はHPLCと比較して、試料の調整が簡便で、試料を非破壊的に測定することが可能で、また、電子スピン共鳴(ESR)もNMRと同様の特徴を有し、さらにベッドサイドでのモニタリングが可能であり、周術期患者におけるリアルタイムでの病態の把握が期待できる。 本研究は、NMRメタボロミクスとESRメタボロミクス(スピンメタボロミクス)により、周術期の合併症を予測、また発生時の病態の把握を行うための技術を確立することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
健常人の血液と尿のサンプルの分析は、順調に進み、スピンメタボロミクスの正常パターンの傾向は概ね把握することに成功したため、合併症を有する術前患者における血液と尿のサンプルの採取に取りかかっているが、ここ数年のコロナ禍により、手術件数が減少し、また同意をいただいたにも関わらず、濃厚接触者等の理由で、手術が中止になる場合が増え、徐々に回復してきていたサンプル数の確保が、やや滞ってしまった。 また、合併症のある患者のサンプルにおいて、健常人とのスピンメタボロミクス上の差異はみられるが、傾向が不安定であり、合併症の分類(循環器系、呼吸器系など)をした上で、サンプルを収集しているが、現時点では傾向を掴みかねており、異常パターン内における分類化をすすめるため、更なるサンプルの収集を行っているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、サンプル採取の対象患者の選択として、①人工心肺を用いない心臓血管外科の患者、②循環器系の合併症のある非心臓手術の患者、③呼吸器系の合併症のある非心臓手術の患者、④保険上、全身麻酔における重症加算がみとめられる患者、をメインにしているが、特に④は26項目にも及ぶため、可能な限り、各項目に対応する患者のサンプルを収集できるようにし、スピンメタボロミクスでの解析における細部にわたる特異性を検出できるように、計画的なサンプルの収集を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による手術件数の減少と、臨床研修への同意書取得者の減少などにより、充分な数のサンプルを採取することができず、また、エビデンスはないが、コロナ禍の影響により、手術患者の重症度が軽減しているような印象があり、思うようなサンプルの収集ができておらず、サンプル収集に係る諸費用が低減したためである。 次年度は法改正によりCOVID-19が感染症5類へ引き下げとなるため、充分なサンプル数の確保が期待できることと、解析の効率化をすすめるために、解析ソフトの増設等を考慮しており、それら諸費用に次年度使用額をあてる。
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