2021 Fiscal Year Research-status Report
Innovative genetic analysis using STR and methylation for opioid mechanisms
Project/Area Number |
20K09213
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
猪股 伸一 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10282352)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オピオイド / 鎮痛薬 / 個人差 / 遺伝多型 / オピオイド受容体 / GIRK2 / OPRM1 / A118G |
Outline of Annual Research Achievements |
痛みの治療に使用されているオピオイドの問題点として、身体依存形成や呼吸抑制の深刻さがあり、米国では国家的社会問題である。2015年米国当局は米国民の36%にあたる9750万人がオピオイドを服用、203万人が依存症とし、現在でも1日当たり128人の米国人がオピオイドで死亡している。日本では見られないこの現象について、違いはどこから来ているのだろう?また、日本人の麻薬性鎮痛薬の利きやすさや副作用の個人差はどこから来るのだろう?オピオイド受容体関連遺伝子について研究の必要性を考えると、癌の予後や認知症、統合失調症の発症、覚せい剤依存などにこの遺伝多型が関与する。乳がんは日本人女性の30人に一人が罹患し壮年期の死亡原因1位。リスク因子を把握することや早期診断が重要。がん細胞にオピオイド受容体があるためこの受容体の関与が示唆される。乳がんではOPRM1多型A118GのGアリルが生存率高いとされるが米国の報告ではGG群が少なく欧米での研究の弱点となっていることに注目。そこで乳がん64人 健常成人758人を対象としGの割合を確保した研究でA118G多型の影響がないことを見出した。また術後のオピオイド必要量と遺伝多型に関する研究結果は一致した見解に至っていないのも上記同様、変異アリルが多い我が国における研究の重要性を示している。そこで麻酔中のレミフェンタニル必要量から研究を開始し、A118G、不活化酵素COMT、オピオイド受容体の伝達系GIRK2、痛みで活性化するNMDA受容体、神経栄養因子BDNFなど多型の影響を検討した。結論として、レミフェンタニルの術中必要量はA118GとGIRK2に影響を受け、これが個人差を規定する。欧米と日本人ではA118G多型頻度が逆転し、欧米では効きやすく副作用も出やすい野生型が多く、これがフェンタニルによる死亡の一因となっていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳がん64人 健常成人758人のサンプルをはじめ多くの解析を行えた。また、A118Gに加え、不活化酵素COMT、オピオイド受容体の伝達系GIRK2、痛みで活性化するNMDA受容体、神経栄養因子BDNFなどの多型解析も数多く行え、オピオイド必要量におけるその影響を検討、順調に研究が進められた。これらを統合し、重回帰分析を用い、個々の患者における適切なオピオイド投与量について、テーラーメイド医療に応用可能な数式が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
STRについては、解析がほぼ終了し、結果の総括作業中である。1年以内に学会および論文としての発表を予定している。メチル化についても、解析が順調に進行している。研究を遂行する上での障害はすでに解決済みであり、目標に向かってさらに研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
COVID19蔓延のため国際学会をはじめ国内の学会も未開催が相次ぎ、発表の機会が得られなかった。また、試薬等については、実験系の改善と最適化などの努力により、節約できた。実験結果が順調に出ているため、今後は学会と論文で発表していく予定である。
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