2022 Fiscal Year Research-status Report
神経障害性疼痛における青斑核の機能変化と鎮痛薬の作用、副作用の関連の解明
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20K09214
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
須藤 貴史 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (60739621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小幡 英章 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (20302482)
林田 健一郎 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (40769634) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 青斑核 / ノルアドレナリン / 下行性抑制系 / 神経障害性疼痛 / DREADD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は慢性痛状態における青斑核の機能変化が投射先ごとに異なる役割を持つのかについて検討することである。中枢神経系におけるノルアドレナリン神経の起始核である青斑核は痛みの慢性化により活性化が起こりにくくなることが報告されており、それは脳機能の調節の異常や動物が元来持つ鎮痛機能(内因性鎮痛)の減弱につながる原因となることもわかっている。また、慢性痛治療目的に使用されている鎮痛薬であるプレガバリンは青斑核の活動性を上昇させることが鎮痛メカニズムのひとつとされているが、慢性痛状態で活動性が低下した青斑核ではプレガバリンへの反応も減弱し、内因性鎮痛を賦活できないことで鎮痛効果が減弱することもわかっている。内因性鎮痛は主に脊髄での作用を反映するが、脳において上昇するノルアドレナリンがどのような作用を持っているのかについてはわかっていないことが多い。本研究では逆行性ウイルスベクターを用いて脳(前頭前野)へ投射する青斑核細胞と脊髄へ投射する細胞機能を別々に薬理遺伝学的に調節する系を用いることで、それぞれの細胞群の役割を検討した。 青斑核から脊髄へ投射する細胞群を興奮させると神経障害性疼痛モデル作成2週後(早期)、6-8週後(慢性期)のいずれにおいても鎮痛が見られた。一方で、前頭前野へ投射する細胞群を興奮させたときは一過性の弱い鎮痛が見られた。抑制した場合はモデル作成初期には明確な変化は見られなかったが、慢性期には鎮痛がみられ、ノルアドレナリンの作用が逆転することがわかった。また、デュロキセチンは神経障害性疼痛モデル作成後の時間経過とともに効果が減弱することを報告したが、この減弱は前頭前野のノルアドレナリン受容体の拮抗や人為的な機能調節により影響を受けることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル作成から実験実施までに8週程度を要する計画であることから若干の遅延は認めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前頭前皮質のノルアドレナリンの増加は時期により鎮痛的から発痛的に変化することが観察されており、これが脳機能とどのように関係するのかについても検討する。また、今回調査したデュロキセチン以外の鎮痛薬であるプレガバリンにについても鎮痛作用減弱と脳のノルアドレナリン増加作用との関連について人為的な青斑核細胞の操作と組み合わせた脳機能評価実験を継続実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度の新型肺炎ウイルス感染症対策の一環として一部の実験を延期せざるを得ない状況であったことが主な理由である。また、認知機能検査に予想より時間と動物数を要したため。 今後の研究機関で、薬理遺伝学的な手法で前頭前野あるいは脊髄へ投射する青斑核細胞を調節した際のプレガバリンの鎮痛の変化についても検討と行う予定である。
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