2020 Fiscal Year Research-status Report
てんかん患者における全身麻酔不安定化メカニズムの解明と安全な麻酔法の確立
Project/Area Number |
20K09217
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐々木 利佳 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (10345572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 弘毅 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (30218854)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 扁桃体 / 全身麻酔薬 / デスフルラン / てんかん / カルバコール |
Outline of Annual Research Achievements |
てんかんの有病率は精神疾患の中では比較的高く(1%),臨床麻酔科医がてんかん患者の麻酔管理をする機会は増加しつつある.脳内神経伝達機構が障害されているてんかん脳において,全身麻酔薬がどのように作用するかは明らかでなく,術中の浅麻酔による術中覚醒,深麻酔による覚醒遅延や周術期の痙攣発作が危惧される.当該研究では,てんかんモデルラットから作製した脳スライス標本を用いて,シナプス伝達に及ぼす全身麻酔の影響について検討した. 雄性ラットを麻酔後に断頭して海馬を摘出した後,ネオリニアスライサーを用いて扁桃体スライス標本を作成した.スライスは,Roth教授(海外共同研究者)と開発した脳スライス用チャンバーに移し37℃に保った.記録電極はマイクロマニュピュレーターを用いて操作し,微小電極増幅器で細胞外電位を観察・記録した. 今年度は,カルバコール誘発てんかん波に及ぼす全身麻酔の影響を検討した.扁桃体の外側核(L)・基底核(B)・中心核(C)にそれぞれ記録電極を刺入し,カルバコール(Cch:コリン作動薬)でてんかん波を誘発した.麻酔薬投与前は,L・B・Cにおけるてんかん波が同期しており,この三者間にネットワークが形成されていた.揮発性全身麻酔薬デスフルラン(6%)を適用すると,L・Bのネットワークは保たれるがCは分断され,基底外側核と中心核の間で断片化が生じた. カルバコール誘発てんかん波モデルにおいて,全身麻酔薬デスフルランは神経ネットワークを断片化することが明らかになった.今後はこのモデルを用いて様々な全身麻酔薬の作用を検討し,てんかん抑制および誘発の観点からてんかん患者の手術にもっとも推奨されると推測される麻酔薬を解明する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により,実験および情報収集ができなかったため計画に遅延が生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこのモデルを用いて様々な全身麻酔薬の作用を検討し,てんかん抑制および誘発の観点からてんかん患者の手術にもっとも推奨されると推測される麻酔薬を解明する.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,実験および情報収集に遅延が生じたため次年度使用が生じた.カルバコール誘発てんかん波モデルが確立できたので,次年度は神経ネットワーク解析システムを整備し,より詳細な解析を行う.
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Research Products
(6 results)