2023 Fiscal Year Research-status Report
てんかん患者における全身麻酔不安定化メカニズムの解明と安全な麻酔法の確立
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20K09217
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐々木 利佳 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (10345572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 弘毅 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (30218854)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | てんかん / 嗅内皮質 / カルバコール / ビククリン / GABA受容体 / 相互相関関係 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
嗅内皮質は,大脳に対する入出力ゲートとしての役割を担うことから全身麻酔薬の作用部位の1つと考えられる. 2021-2022年度は,ラット嗅内皮質スライスにカルバコールを灌流適用してθ波を誘発し,正常脳の機能的神経ネットワークモデルの作製に成功した.さらにカルバコール+選択的GABA(A)受容体拮抗薬ビククリンを灌流投与することにより,てんかん脳モデルを作製した. 2023年度は,この正常脳およびてんかん脳における全身麻酔薬の作用を検討した. 方法:麻酔した雄性ウィスターラットから脳を摘出し,嗅内皮質スライスを作製した.嗅内野外側および内背側に2本の細胞外電極をそれぞれ刺入した後,θ波を誘発した.2つの神経ネットワークにおけるθ波を相互相関解析したヒストグラムおよび相互相関係数(CCF)を算出し検討に用いた.CCFは,2つのネットワークの相互相関が高いと1.0に近い値をとり,ネットワークが断片化すると0に近づく.得られたデータはPowerlab(AD Instruments)を用いてA/D変換 し,Labchartソフトウェア(AD Instruments)で解析した. 結果:CCF解析結果から,正常脳では2つの神経ネットワークの神経結合の多様性と統合のバランスが釣り合っており(Stage 0)CCFが高いことが示された. てんかん脳ではシナプス伝達の促進のために神経結合の多様性が失われ(Stage +1)CCFが低下した.一方,揮発性麻酔薬デスフルランを適用するとネットワークの断片化が起こり(Stage -1)CCFは低下した. 結論:今回の検討から,てんかん発作は神経ネットワークのStageを上げる方向にはたらき,デスフルランはStageを下げると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ渦ならびに「医師の働きかた改革」に対応するための他病院における症例調整により,大学病院の臨床業務は増加したため,研究時間を捻出することが困難となり,十分な研究を行うことができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,臨床業務を再調整し研究時間を捻出する予定である. 正常脳の機能的神経ネットワークモデルの作製ならびに,カルバコール+選択的GABA(A)受容体拮抗薬ビククリンを灌流投与することにより,てんかん脳モデルを作製可能となったため,両モデルを用いて,揮発性麻酔薬,静脈麻酔薬,麻薬など,作用機序の異なる麻酔薬を用いて麻酔薬作用を検討し,てんかん患者における安全な麻酔方法について解明する.
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Causes of Carryover |
コロナ渦や「医師の働き方改革」による大学病院の臨床業務増加のため,実験・研究時間が削られている.この理由により実験動物,消耗費が少なかったことにより使用額が減少した.次年度は臨床業務を整理して,実験時間を確保する予定である. コロナ渦後の影響により,国際学会に参加ができなかったため使用した旅費が少なかった.次年度は6月の麻酔科学会,秋の臨床麻酔学会,冬の麻酔メカニズム研究会などに出席し,研究発表並びに研究者との討議を計画している.
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