2020 Fiscal Year Research-status Report
重症患者における小腸粘膜細胞傷害 -発生メカニズムの解明と新規治療戦略の構築-
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20K09220
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
関野 元裕 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (40380927)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小腸粘膜細胞傷害 / 人工心肺下心臓手術 / 敗血症 / 多臓器不全 / 死亡率 / 危険因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
維持透析施行中の人工心肺下心臓手術患者における小腸粘膜細胞傷害と予後の関連についての研究成果が、英文誌Journal of Surgical Research (Sekino M, et al. Journal of Surgical Research 2020;255:420-427)に掲載された。 この研究では、腸管虚血のリスクが高いとされる維持透析患者施行中の心臓手術患者連続47症例を対象とし、ICU入室時の小腸粘膜細胞傷害が他の重症度スコアや臓器障害スコアと比較し有意に院内死亡と関連していることを示した。小腸粘膜細胞傷害の指標としては、腸型脂肪酸結合蛋白を用いた。 また、腸型脂肪酸結合蛋白濃度上昇に関連する因子として、人工心肺時間の延長、ノルアドレナリンの使用量増加、ドパミン使用量の増加、大動脈バルーンパンピング使用が挙げられた。しかし、症例数は47症例と少なかっため術中因子との関連しか調査できておらず、今後症例数を増やして術前および術中因子との関連を明らかにする予定である。 現在、腸型脂肪酸結合蛋白は臨床使用できないため、臨床上虚血の指標としてよく用いられる乳酸との関連を調査したが、相関関係は認めなかった(Spearman's ρ=0.137, P=0.360)。心臓手術後の小腸粘膜細胞傷害の有無は、現状腸型脂肪酸結合蛋白でのみしか評価できないため、臨床上注意が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工心肺下心臓手術患者を対象とした臨床研究は概ね順調に進展しており、研究成果は英文誌に掲載され、次の論文作成にも取りかかっている。しかし、臨床研究の遂行および解析、論文作成等に時間を要したため動物実験の進行が滞っているため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
人工心肺下心臓手術患者の小腸粘膜細胞傷害の危険因子について明らかにし、その成果を英文誌に投稿する。また、敗血症性ショックにおける小腸粘膜細胞傷害については動物実験により血管収縮薬が腸管血流や小腸粘膜細胞にどのような影響を及ぼすのか検証する。
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Causes of Carryover |
動物実験の進行に遅延が生じたこと、新型コロナウイルス感染症の流行により学会参加が不可能であったことにより次年度使用額が生じた。2020年度に実施予定であった動物実験を実施するため、実験動物、実験機器、薬剤を購入する予定である。
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Research Products
(8 results)