2021 Fiscal Year Research-status Report
重症患者における小腸粘膜細胞傷害 -発生メカニズムの解明と新規治療戦略の構築-
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20K09220
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
関野 元裕 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (40380927)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小腸粘膜細胞傷害 / 敗血症性ショック / 輸液 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症性ショック患者におけるICU入室時の小腸粘膜傷害が、ICU入室後の輸液バランスと関連があることを示した研究成果が、英文誌BMC Anesthesiology (Yokoyama H, Sekino M, et al. BMC Anesthesiology 2021;21(1):293)に掲載された。 敗血症性ショック患者における過剰輸液は臓器うっ血から臓器障害の原因となるため回避すべきとされるが、医原的な過剰輸液なのか、輸液必要量の増大に伴い結果的に輸液量や体液バランスが正となるのかは明らかでない。今回の研究では、敗血症性ショック患者においてICU入室時の小腸粘膜細胞傷害の併発が正の体液バランスと関連していることを明らかにした。機序としては、敗血症性ショックによって生じた小腸粘膜細胞傷害から、腸管虚血やバクテリアルトランスロケーションを介して発生した二次性の敗血症、血管透過性の過剰亢進が必要輸液量が増大に影響を与える可能性が考えられる。敗血症性ショック患者の予後を改善するには、個々の患者に合わせた最適な輸液戦略が必要であり、小腸粘膜細胞傷害は輸液必要量に影響する一つの要因として重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人工心肺下心臓手術患者および敗血症性ショック患者を対象とした臨床研究は概ね順調に進行しており、研究成果は英文誌に掲載され、次の論文作成にも取りかかっている。しかし、一方、新型コロナウイルス感染症の流行等により、動物実験の進行が滞っており、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
人工心肺下心臓手術患者の小腸粘膜細胞傷害の危険因子について明らかにし、その成果を英文誌に投稿する。また、敗血症性ショックにおける小腸粘膜細胞傷害については動物実験により血管収縮薬が腸管血流や小腸粘膜細胞にどのような影響を及ぼすのか検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行等により、動物実験の進行に遅延が生じたこと、学会参加(特に海外)が不可能であったことが次年度使用額が生じた要因である。2021年に実施予定であった動物実験を行うために必要な実験用動物、試薬、実験用器具を購入する予定である。
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