2022 Fiscal Year Research-status Report
重症患者における小腸粘膜細胞傷害 -発生メカニズムの解明と新規治療戦略の構築-
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20K09220
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
関野 元裕 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (40380927)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 敗血症性ショック / 小腸粘膜細胞傷害 / 腸管虚血 / 末梢循環不全 / エンドトキシン吸着療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症性ショック患者における小腸粘膜細胞傷害および腸管虚血は臨床においては早期診断が困難であり、その主要な原因となる腸管血流の評価も難しい。近年、斑状皮膚の存在やcapillary refil1 time延長などの末梢循環不全が腸管血流の低下や腸管虚血の代替指標となることが報告され、また予後悪化に関連することが報告されている。また末梢循環不全の改善が死亡率低下に寄与する可能性も報告されている。しかし、敗血症性ショック患者に合併した末梢循環不全を改善させる方法は確立されていない。 敗血症性ショック患者の循環管理では、輸液負荷に加えノルアドレナリンやバソプレシンなどの血管収縮薬が用いられるが、末梢循環不全を呈した症例における使用は本来非合理的である。そのため血管収縮薬の減量に有益な作用をもたらすと報告されているエンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)が、末梢循環にどのような影響を与えるか後ろ向きに調査した。末梢循環は、pulse-amplitude index (PAI)で評価した。計122名のPMX-DHPを施行した患者が対象となった。PMX-DHP開始後、有意にPAIは上昇し末梢循環が改善していた。特にPAI<1の末梢循環不全症例において有意に改善しており、PMX-DHPは末梢循環不全患者において末梢循環を正常化させ、予後を改善する有用な介入となる可能性が示唆された。本研究結果は、英文誌Scientifc Reportsに投稿し受理され公表を控えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人工心肺下心臓手術患者および敗血症性ショック患者を対象とした臨床研究は概ね順調に進行しており、研究成果は英文誌に掲載され、次の論文作成にも取りかかっている。しかし、その一方、新型コロナウイルス感染症の流行等により、動物実験の進行が滞っており、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
人工心肺下心臓手術患者の小腸粘膜細胞傷害の危険因子について明らかにし、その成果を英文誌に投稿する。また、敗血症性ショックにおける小腸粘膜細胞傷害については動物実験により血管収縮薬が腸管血流や小腸粘膜細胞にどのような影響を及ぼすのかについて検証する。臨床研究においても小腸粘膜細胞傷害、そして腸管虚血の原因となる末梢循環不全の改善を目指した治療戦略の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行等により、動物実験の進行に遅延が生じたこと、学会参加(海外)が不可能であったことが次年度使用額が生じた要因である。2022年に実施予定であった動物実験を行うために必要な実験用動物、試薬、実験用器具を購入する予定である。
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