2022 Fiscal Year Annual Research Report
筋切開創部への局所麻酔薬投与による鎮痛機序と組織修復(炎症性変化)に与える影響
Project/Area Number |
20K09239
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 聡 信州大学, 医学部, 特任教授 (60293510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布施谷 仁志 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (00588197)
杉山 由紀 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (10468100)
川真田 樹人 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90315523)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 局所麻酔薬 / 術後痛 / 筋修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、筋切開部位に投与された局所麻酔薬の、炎症や組織修復に与える影響を調査することであった。本研究ではラットを用いて、開腹後の創部周辺に局所麻酔薬を投与した際の筋組織の状態を評価した。実験は、麻酔下に腹部に長さ2センチの筋切開を作り、切開+ロピバカイン0.5%(ロピバカイン0.5%群), 切開+ロピバカイン0.25%(ロピバカイン0.25%群)、切開+生理食塩水(生理食塩水群)、切開のみの群に分けられた。鎮痛効果と切開縫合2日後、5日後、10日後に腹部切開部分の修復状況を調査した。 生理食塩水群に鎮痛効果はなかったが、ロピバカインは0.25%と0.5%ともに投与後2時間後までは鎮痛効果があった。ロピバカイン0.25%群とロピバカイン0.5%群の間の鎮痛効果に有意差は無かった。5日後と10日後の筋切開部位のHE染色の結果は、ロピバカイン0.25%群、生理食塩水投与群、そして切開のみ群の筋損傷部位の広さと比較して、ロピバカイン0.5%群の筋損傷部位の広さは拡大していた。炎症のマーカーとして用いたCD68による染色では、切開2日後のCD68陽性細胞数が、ロピバカイン0.5%群で有意に他の3群よりも多かった。筋組織再生のマーカーであるMyoD染色では、切開5日後のMyoD陽性細胞数が、ロピバカイン0.5%群で有意に他の3群よりも多かった。 本研究では臨床的に用いられる濃度であるロピバカイン0.25~0.5%を投与した。本研究の結果をまとめると、ロピバカイン0.25%と0.5%は両者ともに鎮痛効果はある。0.5%ロピバカインの筋切開部位への浸潤は、筋損傷を拡大する可能性がある。一方、0.25%ロピバカインの浸潤麻酔は筋損傷を増悪しない。局所麻酔薬の種類による違いや、筋損傷拡大の影響が長期的にどのような影響を残すのかについては更なる検討が必要である。
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