2020 Fiscal Year Research-status Report
認知予備力とミトコンドリア機能の脆弱性との関連を探る
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20K09240
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三澤 知子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (20831390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 厚詞 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (80771980)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 認知予備力 / 術後せん妄 / 術後高次脳機能障害 / ミトコンドリア機能 / 老化促進モデルマウス / シナプトソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
「認知予備力」が低下しているといわれる高齢患者が好発する術後せん妄(POD)や術後高次脳機能障害(POCD)の病因・病態生理は未だ不明な点が多い。我々は、抗POD/POCD薬創出を目指す上で、「認知予備力の大小は、認知機能に関与する神経細胞が細胞障害性刺激を受けた際のミトコンドリア機能の脆弱性の度合いである」という仮説をたてた。全身麻酔下で開腹手術(麻酔+開腹手術)した若齢マウスが、手術4時間後にPOD症状である認知機能異常や注意力障害様の行動変化を示すことを、我々は独自に見出している。本研究では、老化促進モデルマウスの様々な老化ポイントにおいて、無処置ならびに上記処置後の行動変化発現の有無を観察し、大脳皮質や海馬を摘出する。組織からグルタミン酸神経やアセチルコリン神経のシナプトソーム画分を特異的に単離し、ミトコンドリア機能を解析する。この解析により、認知予備力とミトコンドリア機能の関連を探ることを目的としている。 本年度は、老化促進モデルマウスの認知機能障害の有無を評価する行動学的試験系として、Y字迷路試験を採用できるか否かについて、若齢のICR系雄性マウスを用いて検討を行った。その結果、麻酔+開腹手術処置マウスにおいて空間作業記憶障害は認められず、Y迷路試験を用いることはできないと判断した。今後、行動学的評価系は同処置マウスが認知機能異常様行動変化を示した新奇物体認識試験を用いることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、老化促進モデルマウスを用いた本試験を行う前の準備段階として、いくつかある評価系を全て確立することを目標としていた。行動学的評価系として、認知機能を簡易的に判断できるY迷路試験を採用する予定でいたが、麻酔+開腹手術処置した若齢ICR系雄性マウスでは認知機能障害様の行動変化が観察されず、Y迷路試験は採用できないと判断した。代わりに、以前に同処置マウスで行動変化を検出した奇物体認識試験を採用することにした。その他、アセチルコリン神経特異的シナプトソーム調製のために必要な抗体の選定では、独自に作製したアセチルコリントランスポーター抗体での抗原蛋白質検出は確認したが、シナプトソーム単離に使用可能か否かの検討はできていない。また、グルタミン酸神経終末特異的蛋白質を認識する抗体の選定もできていない。しかしながら、シナプトソーム単離後のミトコンドリア呼吸鎖活性測定及び膜電位測定系は確立した。以上のような状況から判断して、進捗はやや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で研究の進捗の遅れをもたらしている要因は、グルタミン酸神経およびアセチルコリン神経特異的シナプトソームの調製に必要な抗体の選定ができておらず、調製法を確立できていないことにある。まずは抗体の選定に注力し、市販品を中心に検討を行う。適当な抗体がない場合は、独自の抗体作製に移り、その使用可否について検討する。同時に、マグネットビーズカラムを用いた各神経に特異的な画分の分取方法の確立、その後のミトコンドリア機能評価に必要なシナプトソーム画分量についても検討する。以上の検討が完了したら、老化促進モデルマウスを用いた本試験を行う。
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Causes of Carryover |
本年度、研究代表者は交付額を全て経費として使用したが、研究分担者の交付分に次年度使用額が生じた。その理由として、シナプトソーム画分の単離に必要なマグネットビーズカラムの購入およびその器具を用いての検討が行えなかったことがある。さらに、予定していた情報収集のための学会出張も新型コロナの影響で中止となり、旅費の使用がなかったことも理由の一つである。今後の研究推進方針に則って研究を行うことにより、交付額相当の経費が必要となる。
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