2021 Fiscal Year Research-status Report
認知予備力とミトコンドリア機能の脆弱性との関連を探る
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20K09240
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三澤 知子 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (20831390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 厚詞 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (80771980)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 術後せん妄 / ミトコンドリア / アセチルコリン神経終末 / シナプトソーム / 老化促進モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
「認知予備力」が低下しているといわれる高齢患者が好発する術後せん妄(POD)や術後高次脳機能障害(POCD)の病因・病態生理は未だ不明な点が多い。我々は、抗POD/POCD薬創出を目指す上で、「認知予備力の大小は、認知機能に関与する神経細胞が細胞障害性刺激を受けた際のミトコンドリア機能の脆弱性の度合いである」という仮説をたてた。全身麻酔下で開腹手術(麻酔+開腹手術)した若齢マウスが、手術4時間後にPOD症状である認知機能異常や注意力障害様の行動変化を示すことを、我々は独自に見出している。本研究では、老化促進モデルマウスの様々な老化ポイントにおいて、無処置ならびに上記処置後の行動変化発現の有無を観察し、大脳皮質や海馬を摘出する。組織からグルタミン酸神経やアセチルコリン神経のシナプトソーム画分を特異的に単離・精製し、ミトコンドリア機能を解析する。この解析により、認知予備力とミトコンドリア機能の関連を探ることを目的としている。 本年度は、アセチルコリン神経のシナプトソーム画分を単離・精製する際に使用する、神経終末特異的に局在するコリントランスポーター抗体の選定を行なった。すでに、コリントランスポーターの細胞外ドメインのアミノ酸配列から独自に抗体を作製しているが、その抗体が目的蛋白質を認識するか否かについてマウス脳組織ホモジネートサンプルを供したウエスタンブロッティング法で検討した。その結果、非特異的な蛋白バンドが数多く観察され、目的蛋白質を認識しているかどうかの判断はできなかった。そこで、同トランスポーターの細胞内ドメインから作製された市販抗体を用いて得られた蛋白バンドと自作の抗体で得られた蛋白バンドとの比較を行ったところ、両者に共通して目的蛋白質分子量付近に観察される蛋白バンドが存在し、自作抗体がシナプトソーム画分の単離・精製に使用できる可能性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アセチルコリン神経特異的シナプトソーム調製のために必要な抗体の選定では、独自に作製したコリントランスポーター抗体がマウス脳組織ホモジネートサンプルにおいて目的蛋白質を検出することをウエスタンブロッティング法で確認はしたが、別の市販抗体を用いてのさらなる確認作業が必要であると考えている。また、マグネットビーズカラムを用いたシナプトソームの単離・精製に使用可能か否かの検討もできていない。一方、グルタミン酸神経については、未だ市販抗体の調査段階にあり、選定に向けたウエスタンブロッティングでの検討もできていない。以上のような状況から判断して、進捗はやや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究進捗の遅れをもたらす要因となっているグルタミン酸神経およびアセチルコリン神経特異的シナプトソームの単離・精製法の確立に注力する。アセチルコリン神経に関しては、神経終末を認識する抗体を見出したので、この抗体がマグネットビーズカラムを用いたシナプトソーム単離・精製に使用可能か否かを早急に検討する。使用が厳しい場合は、コリントランスポーター蛋白の認識部位の異なる抗体を新たに作製する。グルタミン酸神経では、神経終末特異的な蛋白に対する抗体について、市販品を中心に選定作業を行う。適当な抗体がない場合は、独自の抗体作製に移り、その使用可否について検討する。以上の検討と同時並行で、ミトコンドリア機能評価に必要なシナプトソーム画分の蛋白量についても検討する。以上の検討が完了したら、老化促進モデルマウスを用いた本試験を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、主として抗体選定作業に取り組んだため、シナプトソーム画分の単離・精製に使用するマグネットビーズカラムを購入し検討するまでに至らなかったこと、マウスでの検討もできなかったことが挙げられる。また、情報収集のための学会出張に現地参加しなかったことで旅費の発生がなかったことも理由にある。今後の研究推進方針に則って研究を行うことにより、交付額相当の経費が必要となる。
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