2022 Fiscal Year Annual Research Report
漏出細胞内タンパク質の細胞外機能:組織損傷時の貪食細胞への作用と炎症・抗炎症調節
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20K09267
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
泉 友則 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00261694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田岡 万悟 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (60271160)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 組織損傷 / タンパク質漏出 / 貪食細胞 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、研究代表者がこれまでに特定した“組織損傷時に漏出し、単球表面に結合する細胞内タンパク質(細胞外機能分子)”について、組織中の貪食細胞、主としてマクロファージによる死細胞除去とその後の炎症応答(収束or 拡大)という観点から、ターゲットとなる反応とその作用を解析し、漏出タンパク質の炎症やショックにおける複合的な役割や創薬ターゲットとしての有用性を明らかにする。 令和4年度は、引き続き、ホルボールエステル(PMA)にてマクロファージ様に分化させたヒト単球系細胞株THP-1(M-THP-1)を使用し、蛍光標識したラテックスビーズの貪食能に対する細胞外機能分子の影響を解析した。さらに、貪食細胞における機能的役割を明らかにするために、細胞死を誘導したマウスCTLL-2細胞をM-THP-1に貪食させ、培地中の各種サイトカインの濃度を測定し、サイトカイン産生に与える細胞外機能分子の影響を解析した。M-THP-1によるビーズの貪食能は、細胞外機能分子存在下では、非存在下に比べて約2倍に増強された。細胞死誘導CTLL-2細胞を貪食したM-THP-1によるサイトカイン産生は、細胞外機能分子添加によりIL-10が増加し(1.9~2.7倍、p<0.05)、IL-1 betaやTGF-betaについては細胞外機能分子による有意な影響が見られなかった。以上の結果から、組織損傷に伴い細胞内から漏出する本機能分子の役割は、i) マクロファージに直接作用して貪食を促進するとともに、ii) IL-10産生を増強し、損傷部位周囲の炎症反応を早期に終息させることであると考えられた。急性期病態の観点からは、本機能分子は、サイトカインストームなど、過剰な炎症反応を防ぐ善玉の役割を担っていると結論づけた。
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