2021 Fiscal Year Research-status Report
化学テロ発生現場において神経剤を検知する紙製流体デバイスの創製
Project/Area Number |
20K09279
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
宮口 一 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (10370884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡慶次 学 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60311437)
山口 晃巨 科学警察研究所, 法科学第三部, 研究員 (50822087)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経剤 / 流体デバイス / 化学テロ |
Outline of Annual Research Achievements |
吸水性の高い紙を基材とした紙製流体デバイスは、浸潤により自律的に液体が移動するため、電源やポンプが不要であり、リソースが限られるテロ現場における危険物質の検知に適していると考えられる。また、安価で大量生産が可能であることも、実用化のためには利点となる。 令和3年度は、前年度に設計・最適化した紙製流体デバイスについて、種々の化学剤及び有機リン系農薬に対する応答性能を評価した。その結果、神経剤(サリン、タブン、VX及びRVX)は、有機リン系農薬(ジクロルボス、パラオキソン)より約1000倍高感度であることが明らかとなった。さらに、実際の現場資料において想定される有機溶媒等の妨害物質の影響についても検討した結果、種々の有機溶媒共存下においても正しく検知可能であり、かつ偽陽性を生じないことが明らかとなった。なお、DMSOで偽陽性を生じたものの、水で20倍に希釈した場合は偽陽性を生じなかったことから、測定前の希釈が偽陽性の防止及び有機リン系農薬との識別に有効であることが明らかとなった。 さらに、ドアノブやスイッチからの難揮発性神経剤の検知を想定して、ステンレス板及びプラスチック板上に残ったVXを展開液を浸潤させた綿で拭き取り、その展開液をそのまま紙製検査チップに導入して検査した。その結果、約5 ngのVXが検知可能であった。 以上のことから、検出性能の点においては実用化の域に達したと考え、これまでの成果をまとめて論文公表及び特許出願を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標の成果が得られた上、論文として公表し、さらに特許出願を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
実用化を見据えた保存期間の延長のため、添加剤、試薬(特に酵素)の実装方法及び包装方法などについて検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナのまん延により、予定していた出張が事実上不可能となったため。
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Research Products
(2 results)