2020 Fiscal Year Research-status Report
モバイル空間情報を用いた災害時医療体制の分析・再構築と発災時の情報発信拠点づくり
Project/Area Number |
20K09292
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山本 啓雅 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20509723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 義成 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (20570641)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地理情報システム / 南海トラフ巨大地震 / モバイル空間データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、モバイル空間情報を用い、災害時に計画されている医療体制の問題点を明らかにし、改善策を提示するとともに、実災害時にこれらのデータを発信する拠点を構築することである。 具体的には以下の通りである。 1)モバイル空間情報を用いて南海トラフ地震の被害想定を再計算したうえで、医療体制の問題点を明らかにし、その改善策を提示する。2)実災害時には人工衛星から送信された被害データをもとに医療体制の状況を分析し、情報を地域に発信して災害対応を可能にできる拠点を構築する。 本研究ではまず、南海トラフ地震における物的被害想定と、モバイル空間統計から、より正確な傷病者数を推定し、これと医療機関へのアクセシビリティから、各医療機関へどれだけの傷病者が来院するかを重症度別に算出することを目的とした。現在モバイル空間データが入手できていない状況から、本年度はこれまで大阪市の各区における傷病者のみ計算されていたものを、大阪府が公表している「被害想定検討手法」、250mメッシュの人口データ、さらに建物分布に関する地図データ等を用いて、建物揺れ、建物内落下物、火災、津波による重症度別負傷者数の分布(250mメッシュデータ)を、早期避難率の高い場合と低い場合につき計算した。そして傷病者がどの医療機関に搬送されるかを、各医療機関のキャパシティデータと重ね合わせてシミュレーションをおこなった。 最終的に災害拠点病院に搬送される重症・中等症患者を減少させるには、早期避難率を上げること、拠点病院の管轄地域内で余裕のある中等症病院に患者を再分配することが重要であることが分かった。さらに今回のシミュレーションでは沿岸部より、北東部に医療需給の不均衡が起こることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、コロナ禍のため、十分な時間を研究に割けなかったことと、対外的な交渉、現地調査などを行うことができなかった。このため、モバイル空間データの入手や、衛星ブロードバンド受信体制構築に向けた交渉、さらには東日本大震災時の傷病者の動きに関する現地調査が困難であった。しかしながら、本年度は現在入手したデータから、詳細な医療需給のバランスにつき検討し、重症度別、早期避難率の高低別で搬送シミュレーションをおこなうことができた。これにより被害低減に向けた方策や、医療需給のアンバランスに関する地域差につき一定の知見を得た。この結果については第48回日本救急医学会総会・学術集会にて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はモバイル空間データを入手し、人工流動データからさらに詳細な傷病者数を計算することを計画している。また実災害時に衛星から入手した被害データを受け取るための衛星ブロードバンド受信体制について交渉を行うとともに、東日本大震災の被災地内医療機関を訪問し、被害の程度と傷病者の時間的な流れ、さらに医療機関の使用可能性について情報を得る。新型コロナ感染の収束に時間がかかる場合は、当該地域内の医療機関と連絡を取り、WEB会議を開催して、情報の収集を図る。
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Causes of Carryover |
本年度は、コロナ禍のため、対外的な交渉、現地調査などを行うことができなかった。このため、モバイル空間データの入手や東日本大震災時の傷病者の動きに関する現地調査ができなかったことが次年度使用額が生じた理由である。
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