2021 Fiscal Year Research-status Report
S1PR1シグナル制御による脳血液関門保護を介したくも膜下出血の新規治療法開発
Project/Area Number |
20K09340
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 明 東北大学, 大学病院, 助教 (90867863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新妻 邦泰 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10643330)
遠藤 英徳 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (40723458)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | S1P / subarachnoid hemorrhage / blood brain barrier / sphingossine-1-phosphate / S1PR1 |
Outline of Annual Research Achievements |
全脳卒中で最も予後不良であるくも膜下出血においては有効性を示した治療薬は存在しない。脳血液関門(Blood Brain Barrier, BBB)の機能不全は脳卒中にお ける神経損傷の増悪に関与することが示唆されている。脳血管内皮細胞は治療標的としての潜在性を有するが、BBB機能を制御する内皮細胞シグナル経路の理解 が乏しいことから脳卒中における血管内皮を標的とした新たな治療法の開発が進んでいない。くも膜下出血においても発症早期よりBBB機能が破綻し血管透過性 亢進が進み二次脳損傷をもたらし転帰不良に寄与することが知られている。スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は細胞膜上のS1P受容体(S1PR)を介した内皮機能 のモジュレーターである。脳血管においても血管内皮のS1PR1シグナルがBBBを調整し血管透過性制御に関与することが近年明らかとなっている。 本研究は脳血管内皮細胞でのS1PR1シグナル調整によりくも膜下出血の転帰改善が得られるかどうかを動物実験によって検証することを目的としているが、昨年度は薬物的なS1PR1拮抗により野生型マウスにおいてくも膜下出血の転帰を悪化させることを明らかにし、本年度は血管内皮特異的遺伝子改変マウスを主に用いてその作用機序が血管内皮細胞での S1PR1シグナル拮抗によりもたらされていることを証明した。 今後は、最終段階としてS1PR1刺激薬によるくも膜下出血における治療効果を検証したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
S1PR1拮抗薬であるSEW2871を用いて、S1PR1シグナリングの拮抗によりくも膜下出血後の脳血管透過性と細胞障害、致死率が悪化することが証明された。しかしその作用がリンパ球遊走制御による抗炎症作用によるものではなく血管透過性の調整によるものであることは証明できていない。そこで、本年度は血管内皮細胞特異的S1PR1ノックアウトマウスを用いることにより、リンパ球遊走制御を誘導することなく血管内皮細胞特異的な作用を検討した。血管内皮細胞特異的S1PR1ノックアウトマウスにおいてくも膜下出血後に前年度のS1PR1拮抗薬投与と同様のフェノタイプを証明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
S1PR1シグナル調整によりくも膜下出血の転帰改善が得られるというPOCを得るために最終段階としてS1PR1刺激薬を用いて脳血液関門保護とそれに伴うくも膜下出血後の転帰改善を証明する。S1PR1刺激薬の容量、投与タイミング、回数を変更投与し至適投与方法を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染蔓延により学会参加ができなかったことにより、当初計画していた予算より使用が少なく済み次年度使用額が生じました。
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