2020 Fiscal Year Research-status Report
模擬微小重力環境で培養したヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞の脳梗塞ラットへの移植効果
Project/Area Number |
20K09348
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡崎 貴仁 広島大学, 病院(医), 助教 (60437613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
弓削 類 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (20263676)
栗栖 薫 広島大学, 医系科学研究科(医), 名誉教授 (70201473)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 脳梗塞急性期 / 模擬微小重力環境 / ヒト頭蓋骨 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、これまでラット頭蓋骨由来の間葉系幹細胞(rcMSCs)はラット大腿骨由来MSCs(rbMSCs)に比べ,神経堤マーカー,神経栄養因子の発現が高く,脳梗塞モデルラットへの移植効果が高いことを報告した。さらに、ヒト頭蓋骨由来MSCs(hcMSCs)は、ヒト腸骨由来MSCs(hiMSCs)に比べ,神経系細胞へ分化しやすく、神経栄養因子の豊富な発現により、脳梗塞モデルラットへの急性期経静脈的投与で有意に運動機能の改善をもたらすことを報告した。一方で、培養環境の相違については、模擬微小重力(MG)下で培養したhcMSCsは、通常重力(1G)環境下で培養されたrbMSCsに比べ神経栄養因子の発現が高く、脳損傷モデルマウスの機能予後を改善すること、MG環境下で培養されたrbMSCsは、1G環境下で培養したrbMSCsに比べ、脊髄損傷ラットへの移植効果が高いことを報告した。以上より、MG環境下で培養したhcMSCsは、虚血性脳卒中に対してより高い移植効果が見込まれるため、これを検証することとした。具体的には,MG環境下と1G環境下で培養したhcMSCsを脳梗塞モデルラットへ移植し、移植後の運動機能と脳切片で梗塞巣の体積変化を検証する。hcMSCsは、手術中に生じた側頭骨もしくは蝶形骨からの骨片から樹立する。脳梗塞モデルラットにMG環境下で培養したhcMSCsを急性期に移植することで、1G環境下で培養したhcMSCsを移植したものに比べ、脳梗塞後の運動機能(modified neurological severity scoreを用いて)がさらに改善すること、脳切片にて脳梗塞巣のさらなる縮小をもたらすことを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物実験用の麻酔器、顕微鏡、手術器具を用いて、脳梗塞モデルラットを安定して作成する方法を確立した。具体的には、イソフルラン吸入麻酔下に、頚部に1.5cm大の正中切開を加え、総頚動脈、内頚動脈、外頚動脈を露出した。総頚動脈、内頚動脈をミニクリップでクランプしたのち、切断した外頚動脈断端から内頚動脈に向かって、先端4-5mm長に0.37mm径のシリコンコーティングを行った4-0ナイロン糸を、頚動脈分岐部から16-18mmまで挿入し、右中大脳動脈起始部を2時間閉塞させた。 ヒト頭蓋骨由来の間葉系幹細胞は、手術中に生じた側頭骨もしくは蝶形骨からの骨片から安定して樹立することに成功した。さらにhcMSCsを安定して樹立・培養・継代を行い、クリノスタット(微小重力環境細胞培養装置)を用いて、MG環境下と1G環境下で培養したhcMSCsを安定して樹立することができた。 脳梗塞モデルラットへのMSCs投与を安定して施行することに成功した。具体的には、脳梗塞急性期(脳梗塞完成後12時間後)に、尾静脈から経静脈的に行った。投与細胞は1.0×1000000個を100μlで希釈した。PBS群、hcMSCs(1G環境下で培養)群、hcMSCs(MG環境下で培養)群の3群にわけて、現在、移植後それぞれの運動機能を含めたmodified neurological severity score (mNSS)の評価、脳切片での梗塞巣の体積変化を比較検証しているところである。移植前の運動機能に相違がないように、mNSSは9-13点のものに限定して移植を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、脳梗塞モデルラットにMG環境下で培養したhcMSCsを急性期に移植することで、1G環境下で培養したhcMSCsを移植したものに比べ、脳梗塞後の運動機能(modified neurological severity scoreを用いて)がどのように変化するかを検討しており、in vivoでの実験を中心に行っている。現在までの状況としては、PBS群が3例、hcMSCs(1G環境下で培養)群が4例、hcMSCs(MG環境下で培養)群が4例で、運動機能を評価しているところである。それぞれ、脳梗塞作成後のday 35までの運動機能の評価を予定しており、各群では目標として10例前後づつでの検討を予定している。したがって、今後は各群それぞれの症例を、目標の個体数まで蓄積していき、評価検討していく予定である。評価するポイントとしては、脳梗塞作成後急性期のday 1, 3, 7, 14, 21, 28, 35を予定しており、各日にちにおけるmNSSの評価を行う。加えて、day 35における脳切片での脳梗塞巣の体積変化を比較検証する予定である。 また、in vitroの実験としては今後、神経堤マーカーであるsnailやslug、未分化細胞マーカー(Oct-4)、細胞遊走因子受容体(CXCR4)、神経栄養因子であるnerve growth factor (NGF)やbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)、HGF、TGF-βの発現などを比較検討し、MG環境下で培養したhcMSCsが、1G環境下で培養したものに比べ、これらの因子の発現が高まり、脳梗塞急性期ラットへの投与で機能予後を高めることも証明したい。
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Causes of Carryover |
全体的な研究の進捗は遅れていないが、研究人員やCOVID-19の影響で必要な実験機材の納入遅れが生じており当初予定していた検討数に到達しなかった。また、想定していたよりも細胞培養やラット脳梗塞モデル作成の費用が掛からなかった。次年度は研究人員を増員し検討数を増やすとともにin vitroの実験で各因子の検討に対し研究費を使用する予定である。
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