2021 Fiscal Year Research-status Report
線維芽細胞に着目したくも膜炎症の分子機構の解明と新たな脳保護薬の開発
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20K09352
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
三上 毅 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30372816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 比女 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (30815452)
秋山 幸功 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50404653)
三國 信啓 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60314217)
小松 克也 札幌医科大学, 医学部, 助教 (60749498)
平野 司 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (90867483) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ischemia / arachnoid membrane / inflammation / fibrosis |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床データから得られた知見として、慢性脳虚血性疾患に対する開頭血行再建術で得られたくも膜と脳脊髄液を使用した。対象群として開頭による非虚血性疾患で得られた前頭葉皮質血管(M4)直上のくも膜を使用した。これまでの研究成果としては、くも膜の厚さは年齢や疾患が影響しており、厚いくも膜では内層に線維芽細胞やマクロファージが増勢し、VEGFαやTGFβなどの炎症マーカーが増加していた。また、くも膜内の線維化や慢性炎症が確認されていることを基に、免疫組織学的に線維化に関わる炎症マーカーや間葉系幹細胞の存在、血管新生の有無を確認した。虚血性疾患において、強い炎症反応が認められており、疾患による影響もみられることがわかった。 また、実験動物として両側総頸動脈閉塞による認知症モデルによる評価を行った。8週のWister kyotoラットにおいて、両側総頚動脈閉塞モデルを作成し、頚動脈閉塞後4週間目に実験用7.0TMRIで脳小血管病性変化を計測した。また、電気生理学的な影響を測定するため、Pinnacle Technology社の大脳皮質脳波測定システムで、てんかん波や高次脳機能を反映するβ波やγ波などの高周波帯域のパワースペクトラム解析を行った。虚血によるてんかん原生が非常に強く影響を及ぼしていることを見出すとともに、MRI及び電気生理学的な虚血の影響を推し量れるシステムを確立した。また、両側頚動脈閉塞と再灌流の電気生理学的変化や組織変化、MRI画像変化の違いを検討し、組織学的変化が及ぼす電気生理学的異常について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画は、臨床データと実験モデルデータから虚血によるくも膜のfirosisや炎症の影響をみることにあった。臨床データは、おおむね順調に解析しており、基礎データもモデルを確立したところである。今後、モデル動物から虚血あるいは再灌流によるfibrosisや炎症の影響を解析していく段階となっている。現状では、予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ラットのくも膜内の炎症細胞や線維芽細胞、間葉系幹細胞、血管内皮の有無を検討する。方法としては免疫組織学的にCD34, CD68, CD31を染色し、半定量的に評価する。さらに、摘出したくも膜からRNAを抽出。digital PCRを行って慢性炎症マーカーの発現量を定量化する。さらに、モデル動物におる介入実験として、上昇しているマーカーを抗炎症作用をもつ薬剤(エンパグリフロジンを予定)を用いて抑制したり、線維芽細胞への分化を抑制することにより、脳保護作用や認知機能改善に繋がるかを見出す。以上のように、実臨床と動物実験の両者からアプローチし、くも膜内の細胞増殖因子や細胞内シグナル伝達機構を解明することにより、最終的には脳保護作用や認知機能改善の鍵となる物質を探し出す。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の蔓延により、実験業務停止期間があり、その分の次年度使用額が生じた。今後の使用計画は、前年使用できなかった分を動物モデル作成数増加にあてる予定である。
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