2020 Fiscal Year Research-status Report
神経膠腫の浸潤機序解析と浸潤能を標的とした先駆的治療法の開発
Project/Area Number |
20K09359
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
鰐渕 昌彦 大阪医科大学, 医学部, 教授 (30343388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川端 信司 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (20340549)
佐々木 祐典 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (20538136)
平松 亮 大阪医科大学, 医学部, 講師 (40609707)
池田 直廉 大阪医科大学, 医学部, 講師 (50434775)
古瀬 元雅 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (70340560)
野々口 直助 大阪医科大学, 医学部, 講師 (70388263)
佐々木 優子 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80631142)
本望 修 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90285007)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / 浸潤能 / ACTC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ACTC1(actin, alpha cardiac muscle 1)はアクチンのisoformの一つで、心筋幹細胞の遊走に関与し心中隔欠損の責任遺伝子として知られるが、我々は本遺伝子の発現の多寡が悪性グリオーマの予後や浸潤能に関与することを見出した(Ohtaki S. J Neurosurg. 2017, Wanibuchi M. J. Neurolog. Sci. 2018)。本研究は神経膠腫細胞の遊走・浸潤におけるACTC1の役割を解明する共に、その制御に関与する遺伝子ネットワークを明らかにし、新規治療薬の開発に繋げることである。 TCGA PanCancer Cell line Atlasに登録されている1,156種類のがん細胞株における遺伝子発現データを解析した結果、ACTC1の発現量は「上皮間葉転換(EMT)」の主要なマーカー遺伝子であるFN1、SNAI1、ZEB1、TWIST1、VIM、FOXC2の発現量と有意な正の相関が認められることから、ACTC1の発現は腫瘍細胞のEMTに関連しているとの仮説を立てた。また転写因子のデータベースを用いてACTC1のプロモータ配列に対し特に親和性の高い転写因子を検索し、ACTC1の発現制御に関与している可能性が高い転写因子としてSMARCA4、RB1、POLR2A、CBFA2T2、WT1、GLIS1を同定した。ヒトグリオーマ細胞株8株を用いてtranscriptome解析を行い、ACTC1の発現量と有意な共変動を示す遺伝子を対象にパスウェイ解析を実施したところ、Rap1、Hippo、Relaxin、Apelin、Sphingolipid、C-type lectin receptor及びOxytocinのsignaling pathwayがACTC1の発現に有意な関連を持つシグナリングパスウェイとして同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ACTC1の発現に有意な関連を持つ主なシグナリングパスウェイを同定し、ACTC1の発現量は「上皮間葉転換(EMT)」の主要なマーカー遺伝子であるFN1、SNAI1、ZEB1、TWIST1、VIM、FOXC2の発現量と有意な正の相関を示すことを明らかにした。現在、FDA-approved drug libraryを用いて、ACTC1やEMT関連遺伝子の発現を抑制し、かつBowden chamber assayで細胞の浸潤を有意に抑制できる薬剤のスクリーニングを実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ACTC1の発現と有意な発現共変動を示す遺伝子および遺伝子パスウェイをターゲットに、強制発現実験ならびに発現抑制実験を行って悪性グリオーマ細胞の遊走・浸潤へ与える影響についてin vitroならびにin vitroで検討する。 2)上記実験の遺伝子発現データに対し、wPGSA法(”weighted Parametric Gene Set Analysis”: Gene Set Enrichment解析に確率的な制御関係を考慮に入れて経時的な遺伝子発現変化を解析する手法で、重み付き検定を導入することで各転写因子の遺伝子毎の制御頻度情報を加味した結果が得られる)を用いて、浸潤能が亢進もしくは抑制された際に有意変動する遺伝子の中でACTC1の発現を上流で制御する遺伝子群(miRNA/lncRNAを含む)と、それに関与する転写因子を抽出した「遺伝子ネットワークモデル」を作成する。 3)FDA-approved drug libraryを用いて、ACTC1の発現を抑制し、かつin vitroで細胞の遊走・浸潤能を有意に抑制する薬剤のスクリーニングを行っており、特にその効果が高いものについては脳腫瘍モデルを用いて、そのin vivoでの浸潤抑制効果について検証する。 4)今年度の研究の結果、FerroptosisおよびFc gamma R-mediated phagocytosisのgene pathwayもACTC1の発現と有意に連動することが判明しており、これらの遺伝子パスウェイと悪性神経膠腫の浸潤能とのつながりについても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に実施した遺伝子抑制実験において使用したdigital PCR等の消耗品費用が見込みよりも少額で済んだため。現在実施中のin vitroで浸潤能の抑制効果を有する薬剤スクリーニングの結果、抽出された薬剤を対象に動物治療実験を実施するが、その際の薬剤購入費用に当てる予定である。
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