2021 Fiscal Year Research-status Report
シロスタゾールを用いたもやもや病における内因性幹細胞賦活と血管新生促進療法の開発
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20K09362
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤村 幹 北海道大学, 医学研究院, 教授 (00361098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨永 悌二 東北大学, 大学病院, 教授 (00217548)
新妻 邦泰 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10643330)
麦倉 俊司 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (20375017)
坂田 洋之 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (80722305)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血管新生療法 / もやもや病 / 再生医療 / 多能性幹細胞 / 血行再建術 |
Outline of Annual Research Achievements |
もやもや病は異常血管網発達ならびに代償的な側副血行路を含めた血管新生能を有する原因不明の疾患である。小児や若年成人に好発し、浅側頭動脈・中大脳動脈吻合術(直接血行再建術)や側頭筋を用いた間接血行再建術を含めた外科治療の有効性が確立しているが、重症例に対する治療は未確立である。間接術は脳損傷を伴う重症例にも安全に行うことが可能であるが、間接術単独の場合は血管新生不良例が見られる点が問題である。血管新生能を高める試みがなされているがその効果は限定的であるのが現状である。今回、内因性多能性幹細胞とその活性化に期待が持てる薬剤に着目し、間接術からの血管新生の機序を解明し、その効果を促進する手法を開発することによりもやもや病の治療成績の向上が期待できると着想した。本研究の目的は、もやもや病患者クモ膜における内因性多能性幹細胞の発現と血行再建術後の血管新生の関連を明らかにし、「もやもや病に対するシロスタゾールを用いた内因性多能性幹細胞の賦活と血行再建術効果促進」の概念実証し、臨床レベルでもやもや病手術例に対するシロスタゾールを用いた内因性多能性幹細胞の賦活による血行再建術効果療法を確立することである。 2年度目は、血行再建術を行ったもやもや病患者に由来する検体を用いて、患者クモ膜組織における内因性多能性幹細胞を免疫組織学的に検討した。18例の患者より得られたクモ膜について、多能性幹細胞の複数の指標について免疫組織染色を行ったところ多くの検体において多能性幹細胞マーカー陽性所見を認めた。また術後MRAを行い血管新生の程度と術前脳虚血、RNF213遺伝子異常との関連を検証し有意な結果を得た。もやもや病患者クモ膜において内因性多能性幹細胞が存在すること、RNF213遺伝子変異により血管新生が増幅されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血行再建術を行ったもやもや病患者に由来する検体を用いて、患者クモ膜組織における内因性多能性幹細胞を免疫組織学的に検討したが、2年間で44例という予想を超える患者より手術検体が得られた。そして免疫組織染色においても多くの症例で多能性幹細胞マーカー陽性所見を認めた。シロスタゾール内服例とアスピリン内服例が含まれており両群間で多能性幹細胞マーカー発現動態と術後血管新生の程度を比較予定である。マウス間接血行再建術モデルに対するシロスタゾール投与に関しては今年度も有意な結果は得られておらず今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
げっ歯類モデルにおける間接血行再建術モデルに対するシロスタゾール投与については、もやもや病疾患感受性遺伝子であるRNF213遺伝子変異マウスを用いて一側内頚動脈/対側総頚動脈結紮と間接血行再建を施行し、脳虚血翌日から14日目までシロスタゾール投与を行う群と、生食投与の群における術後14日目の血管新生の程度、多能性幹細胞マーカーの発現動態について検証予定である。 もやもや病患者クモ膜における内因性多能性幹細胞の発現と血行再建術後の血管新生の関連については今後も手術症例から得られる検体を用いた多能性幹細胞マーカー陽性細胞の動態についてアスピリン投与群とシロスタゾール投与群で比較検証を行う。さらに2群間において術後慢性期の脳血管撮影、高感度MRA、脳血流SPECTをもやもや病 血行再建術後評価として施行しており、これら各評価項目につきシロスタゾール投与群、アスピリン投与群で比較検討を行う予定である。さらに術後6か月後のMRAによる間接血行再建発達の程度についてシロスタゾール投与群、アスピリン投与群で比較検討を行い、RNF213遺伝子変異との関連についても検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの広がりに伴いもやもや病に対するバイパス術の件数が減少したことに加えて、研究代表者の藤村幹が東北大学から北海道大学に異動したため、手術症例数が一時的に減少し動物実験も中断したため、一定量の実験、解析を次年度に繰り越す必要性が生じた。RNF213遺伝子変異マウスも異動のため使用がかなわなかった。 次年度には十分な手術検体を採取し免疫組織染色を推進するとともに、マウスを用いた概念実証実験を推進する予定である。
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Research Products
(18 results)