2020 Fiscal Year Research-status Report
網羅的メチル化解析で同定された頭蓋内高悪性度胚細胞腫治療標的候補分子群の機能解析
Project/Area Number |
20K09380
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
富山 新太 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 脳神経外科, 講師 (40385810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
里見 介史 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (10633977)
市村 幸一 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40231146)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 頭蓋内胚細胞腫瘍 / 非ジャーミノーマ性胚細胞腫瘍 / マイクロRNA / 新規分子治療標的開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭蓋内胚細胞腫瘍(iGCT)は稀ではあるものの特に本邦で多く発症する頭蓋内悪性腫瘍群であるが、その中でも高悪性度群である非ジャーミノーマ胚細胞腫(NGGCT)に対する有効な治療法は未だ存在しない。そこで我々が設立し世界有数の症例数を保有するiCGT consortiumに集められたiCGTサンプル群に対し、本プロジェクトの予備実験としてメチル化アレイによる網羅的解析を行った結果、iGCTのなかでも特にNGGCT群で特異的に機能している可能性のあるmiR群を同定し得た。そこで今回我々は、それらのmiR機能解析を行うことにより最終的にNGGCTに対する新規分子治療標的の開発を目指した。 今期では、まずそれらのmiRのうち、特に纏まった遺伝子上にコードされている4つに関して、我々が以前から用いている既存のNGGCT細胞株であるTcam2(混合性胚細胞腫細胞株)ならびにYST1細胞(卵黄嚢腫瘍細胞株)での発現レベルをqPCRにて確認した。すると、4つのmiRのうち3つに関しては2つのNGGCT細胞株において正常細胞由来細胞と比較し発現が上昇していることが確認された。そこでこれら3つのmiRを前述の2つの細胞株にてのノックダウンしたところ、細胞増殖ならびに細胞運動の抑制が確認されたことから、これらの3つのmiRはNGGCTの腫瘍特性を制御している可能性が示唆された。この結果を基に、次に我々はこれら3つのmiRによってNGGCT細胞のどのような細胞内分子シグナルが制御を受けるのか検討すべく、現在はこれら3つのmiRをNGGCT細胞群でノックダウンさせた際の細胞増殖/細胞運動に関わる主な分子シグナルの変化をウエスタンブロットやELISA等で網羅的に解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来の今期の予定では、各miRのNGGCT細胞株における発現レベル並びに大まかな機能の確認に加え、可能であれば治療標的となる分子や分子シグナルの候補のスクリーニングを開始する予定であった。実際はスクリーニングの開始までには至らなかったもの、少なくとも最低限の目標には達成することが出来たと考えている。具体的には、NGGCT細胞株群では少なくとも3つのmiRの発現上昇が認められ、それらmiRの発現抑制によってNGGCT細胞の細胞増殖ならびに細胞運動といった腫瘍特性が抑制されることを明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
3つのmiRによって制御されるNGGCTにおける細胞内分子シグナルのスクリーニングを進め、候補シグナルが同定できた場合は、そのシグナルの制御分子を標的をした薬剤によってNGGCTの腫瘍特性が抑制されるかどうかの判定をin vitroならびにin vivoにて行っていく。 また、3つのmiRを単独ではなく3つ同時に発現抑制させた場合では、それぞれを単独で発現抑制させた場合と比較して腫瘍特性の更なる抑制効果が得られるかどうかの検討も行う予定である。
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Causes of Carryover |
今期(2020年度)は、研究の開始段階では比較的順調に実験が進み、研究経費も最低限の使用で済んだのに対し、その後の研究の進行にかなりの遅れが生じたため、2020年度中に開始予定であった治療標的分子/治療候補薬剤のスクリーニング(全研究過程において最も時間と経費が必要となる)までに至らなかった。そのため、それに対して使用する予定であった研究費がそのまま未使用となってしまった。 しかしながら、2021年度においては既に同スクリーニングを開始しており、今後はhigh through putな網羅的解析を含む様々な手法を用いてmiRの実験結果を基にしたNGGCTの治療標的分子シグナル/分子と、新規治療標的薬剤の候補分子の同定を行う予定であり、この執行のためには2020年度の残予算と20201年度の予算を合わせた研究予算が必要不可欠であると考える。
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