2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜イオンチャネルの網羅的解析による関節変性疾患診断法および抑制療法の開発
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20K09407
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
熊谷 康佑 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50649366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 晋二 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90283556)
豊田 太 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90324574)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / 変形性関節症 / 細胞膜イオンチャネル / 網羅的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
膝関節を中心とした関節変性疾患(変形性関節症: Osteoarthritis, OAや関節リウマチ: Rheumatoid arthritis, RA)は全世界で共通の課題であり、罹患者の生活の質を著しく損なっている。そのため、軟骨再生治療やRAの病因解明については多くのアプローチにより研究がなされているが、その方法や原因は未だ解明されていない。 我々は昨年度に引き続き、細胞膜イオンチャネルについて研究考察をさらに進め、関節構成成分である関節滑膜、軟骨の恒常性維持に関与する標的チャネルの分子実体の解明、疾患特異的に関与する因子の同定と解析について検討を行ってきた。これらの解析結果を踏まえて、最終的には関節変性疾患の病態解析システムを構築し、最終的に遺伝子・細胞レベルでの新しい診断法および治療法の開発を目標とする。 現時点では滑膜に関してELISA法によるサイトカイン解析を通じてOAとRAにおける炎症の特徴について比較を行い、炎症性OA等RAとの類似点の解析を進め、その結果からいくつかの細胞膜イオンチャネルに標的を絞り、PCR法にて発現解析を継続して行っているところである。また今年度に関しては網羅的なタンパク質同定と発現相対定量解析を行っているが未だ標的となる結果を得られていない。そのため、前年度より継続して、当院通院加療中のOAおよびRA患者よりサンプル採取を追加し、継続してサイトカイン解析、PCR等を行なっている。また、疾患修飾因子の検討のため年齢や合併疾患による患者特徴と治療薬について統計解析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト膝関節滑膜由来培養細胞に関しては以前の研究課題(17K16690)にてマイクロアレイ・ELISA解析を行い、その結果より現在候補となるイオンチャネルに標的を絞っている段階である。ただしヒト細胞による個体差が大きいためか昨年度に引き続きPCR実験を行っているが、現時点では標的イオンチャネルの確定は出来ていない。 さらにはOA/RA/コントロールのタンパク質発現解析・相対定量解析実験も行ってはいるが、上記同様に疾患間の比較検討が進んでおらず、進捗状況としてはやや遅れている状態である。 英国Liverpool大学を訪問しての共同実験やデータ解析に関しては、日本においてもようやくCOVID-19対策による渡航制限が緩和されつつあり、次年度以降に計画を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と同様となるが、これまでに明らかにした各種イオンチャネルの容積変化(浸透圧変化)に対する反応結果を解析し、マイクロアレイ等による網羅的解析の結果ならびにタンパク質発現解析・相対定量解析結果との相関を確認し、疾患原因因子(遺伝子)の同定を目指す。現在までの各種網羅的解析では原因遺伝子の確定は未だ得られておらず、今後は周辺環境を加味し候補遺伝子の範囲を拡大し検証を行っていく予定である。これらを踏まえて最終的にはRA/OAにおけるチャネル阻害剤等各種薬剤に対する反応を数値化し、客観的且つ定量的に評価し(シミュレーション)モデル化を目指す。 細胞シミュレーションモデル作成に関しては滋賀医科大学整形外科学講座・細胞機能生理学講座の協力の下で行う予定である。またLiverpool大学のRichard Barrett-Jolley博士のグループと協力しデータの解析、他施設を含めた研究者間での共用化に関してシステム構築を行っていく予定としている。 現時点では細胞外環境変化(細胞周囲の浸透圧変化、運動療法等のメカニカルストレスや薬物(ステロイドや鎮痛剤(NSAIDs)刺激等))に対する生理的応答を個々のイオンチャネルで解析できるシステムを確立することを目標とする。
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Causes of Carryover |
現在までの研究においてPCR/ELISA実験における抗体やプライマーの購入を行っているが、整形外科学講座の他の研究者と共に実験を行なった結果、自己使用分に関しては必要がなく、繰越金が発生する結果となった。また、COVID-19の蔓延に伴い、当大学および附属大学病院においても患者受入や感染対策に伴い、実験自体の制限が実施され、当初予定していたOA/RA/コントロールのタンパク質発現解析・相対定量解析実験のための十分な検体数確保に遅れが生じ、一部実験を施行したものの、その解析結果は必要十分なものではなく、結果の再考察を行った上で改めて次年度に追加実験を行う予定である。さらには英国Liverpool大学訪問のために渡航費の計上も行っていたが、現在のCOVID-19蔓延による渡航自粛要請もあり余剰分が生じる結果となった。これらに関しては次年度に向けきちんと予算配分を確認し使用する予定である。 また本年度施行出来ていない実験、研究結果報告の為の学会発表や論文作成、さらには発表に伴う経費としての利用増加が予想される。すでに一部結果に関し研究発表や論文作成を予定しており、必要に応じて追加実験等に使用する予定である。
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