2020 Fiscal Year Research-status Report
ユーイング肉腫におけるマイクロRNAとDNA修復機構の治療抵抗性獲得への関与
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20K09414
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
河野 正典 大分大学, 医学部, 助教 (30571773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田仲 和宏 大分大学, 医学部, 准教授 (10274458)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Ewing肉腫 / 遺伝子修復因子 / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
Ewing肉腫は高悪性度の腫瘍であり、放射線治療および化学療法に対し抵抗性の場合の予後は極めて不良である。本研究は、Ewing肉腫の特異的融合遺伝子産物であるEWS-Fli1蛋白が、放射線・化学療法に対する抵抗性獲得にいかに関与しているか、その機序の解明を目的とする。EWS-Fli1に特異的なsiRNAによるknock down後、有意な発現変化を示すmicroRNA (miRNA)とその標的mRNAを網羅的に解析することで、double strand break (DSB) 修復因子の遺伝子発現変化を検索し、それら修復因子の発現に関与するmiRNAを同定、その制御機構を明らかにする。Ewing肉腫細胞は、miRNAの脱制御を介してDSB修復因子の遺伝子発現を亢進させることで、放射線・化学療法に対する抵抗性を獲得している可能性が高い。本研究により、EWS-Fli1により発現が亢進している遺伝子とそれを制御しているmiRNAを同定し、治療抵抗性の根本的なメカニズムを追求する。難治性であるEwing肉腫の病態解明および新たな治療標的を開発するという意味からも、本研究は非常に意義深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はすでに、特異的融合遺伝子をKDしたEwing肉腫細胞におけるmiRNAおよびmRNAの発現変化を観察し、EWS-Fli1の影響を網羅的に把握している。さらにDSB修復経路HRおよびNHEJのみならず、ミスマッチ修復、ヌクレオチド除去修復、メチルトランスフェラーゼなど他のDNA修復因子についても発現異常を解析している。また、特異的融合遺伝子のKDによって共通に発現上昇するmiRNAの中に、これら修復系因子の遺伝子発現を標的とする複数のmiRNAも特定している。Ewing肉腫細胞株に修復系因子のmRNAを標的とするmiRNAを導入することで、Ewing肉腫細胞の遺伝子発現およびphenotypeの変化を観察する。さらにHR, NHEJという異なる経路が治療抵抗性の獲得において果たす役割を明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はEwing肉腫細胞株に修復系因子のmRNAを標的とするmiRNAを導入することで、Ewing肉腫細胞の遺伝子発現およびphenotypeの変化を観察する。さらにHR, NHEJという異なる経路が治療抵抗性の獲得において果たす役割を明らかにする。具体的には研究期間内に以下のことを解明する。1)これまでに得られたマイクロアレイの結果から、修復因子のmRNAを標的とするmiRNAを抽出する。その中でも特にsiRNAによるEWS-Fli1 KDで上昇するmiRNAを選定する。2) Ewing肉腫細胞株に対し、抽出したmiRNAのmimic oligoを導入後、目的とする修復因子の遺伝子発現が低下したことをmRNAおよび蛋白レベルで実証する。同様にsiRNA導入後、EWS-Fli1の遺伝子発現が低下したことを確認する。3) 2)で作成した細胞株群に抗がん剤投与および放射線照射を行った後、DSBが増減するかパルスフィールドゲル電気泳動にて評価する。同時に細胞増殖、アポトーシス誘導に関し検証を行う。Mimic oligoおよびsiRNA導入後の細胞株ではDSB発生頻度が上昇し、細胞増殖の抑制とアポトーシス誘導が増加すると予測される。4)ヌードマウスにmimic oligoおよびsiRNA処理した腫瘍細胞株を移植し、in vivoにおいての抗がん剤治療を行い腫瘍増殖に変化があるか観察する。同時に増殖能および転移能の変化についても検討する。
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Causes of Carryover |
申請時点では至適抗体濃度の同定に濃度依存性試験、時間依存性試験に多くの試薬を使用する予定であったが予備実験の段階で適正試薬濃度が判明したため結果として予算が余る事になった。また動物実験に関しても同様で報告できるデータが比較的早期に取得できたため申請時の予算と解離が生じた。[使用計画] 予定していた動物モデルの数を増やすことでデータの信用性を高めるとともに再現性の得られるデータを得るための手法に改良を重ねていく。
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