2021 Fiscal Year Research-status Report
骨・軟骨コラーゲン分子群の組織特異的発現、骨格形成機序の解明と再生医療への応用
Project/Area Number |
20K09436
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
松尾 哲孝 大分大学, 医学部, 准教授 (10284788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 博之 大分大学, 全学研究推進機構, 教務職員 (50448552)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 線維性コラーゲン / 骨 / 軟骨 / 転写 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外マトリックス分子の中で、線維性コラーゲン分子は、生体内において高分子会合体を形成しており、特に、骨・軟骨組織の機械的強度や柔軟性に対して中心的な役割を演じている。更に、これらの分子は、細胞との相互作用により直接シグナルを伝達し、正常な細胞分化や組織の発生過程を経て、機能を維持している。そして、この制御機構が破壊されると、適切な細胞外環境が維持できなくなり、正常な細胞分化・組織発生や機能が失われ、骨格形成異常等の疾患が引き起こされる。そこで本研究では、骨・軟骨コラーゲン分子群の組織特異的発現と骨格形成調節機構について、以下の視点で解析する。 1)骨・軟骨組織における線維性コラーゲン遺伝子の発現調節機構についての検討。骨および軟骨に発現しているコラーゲン遺伝子(V/XXIV型およびXI/XXVII型)の発現調節基機構について、培養細胞およびマウスを用いて解析する。培養細胞を用いて、骨および軟骨に特異的なシスエレメント(エンハンサーおよびサイレンサー)について検討し、関与する調節因子の役割を明らかにする。 2)骨・軟骨組織における線維性コラーゲン遺伝子のlong ncRNAによる転写調節機構、およびmirRNAによる翻訳調節機構についての検討。トランスクリプトームに着目し、long non-coding RNAによる転写調節機構と、mirRNAによる翻訳調節機構について、培養細胞を用いて検討する。コラーゲン分子群の骨・軟骨分化機構とその機能を明らかにし、骨・軟骨形成異常疾患の診断・治療と再生医療への可能性を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)骨・軟骨組織における線維性コラーゲン遺伝子の発現調節機構についての検討。 1-1)骨に発現しているコラーゲン遺伝子(V/XXIV型)の発現調節機構について、特に骨分化に重要な転写因子であるSp7/Osterixが、V型コラーゲン遺伝子の転写活性を見出しており、その作用機序を強制発現やノックダウン遺伝子導入で検討したところ、明らかな活性増強作用が認められた。現在、その増強メカニズムについて検討中である。 1-2)軟骨に発現しているコラーゲン遺伝子(XI/XXVII型)の発現調節機構について、軟骨分化に重要な転写因子であるSox9が、XI型コラーゲン遺伝子の転写活性を見出した。現在、その作用機序について検討している。 2)骨・軟骨組織における線維性コラーゲン遺伝子のlong ncRNAによる転写調節機構、およびmirRNAによる翻訳調節機構についての検討。 骨芽細胞および軟骨細胞において、そのトランスクリプトームに着目し、long non-coding RNAによる転写調節機構と、mirRNAによる翻訳調節機構について、いくつかの細胞を用いて網羅的に解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)骨・軟骨組織における線維性コラーゲン遺伝子の発現調節機構について。 1-1)骨に発現しているコラーゲン遺伝子の発現調節機構について、骨分化に重要な転写因子であるSp7/Osterixが、どのようなメカニズムでV型コラーゲンの転写活性を増強しているのかについて、これまで用いていた細胞株だけでなく、別の細胞株も加えて引き続き検討を加えている。 1-2)軟骨に発現しているコラーゲン遺伝子(XI/XXVII型)の発現調節機構について、見出した軟骨分化に重要な転写因子であるSox9が、XI型コラーゲン転写活性を増強していることについて、様々なルシフェラーゼコンストラクトを作製し、更に、数種類の軟骨細胞を用いて比較することで、作用機序を検討している。 2)骨・軟骨組織における線維性コラーゲン遺伝子のlong ncRNAによる転写調節機構、およびmirRNAによる翻訳調節機構についての検討。 骨芽細胞および軟骨細胞において、引き続き網羅的にスクリーニングを行っている。long non-coding RNAによる転写調節機構と、mirRNAによる翻訳調節機構については、様々な培養細胞株を加えて多方面からの比較検討を行っている。更に、骨・軟骨特異的な遺伝子ライブラリーを作製し、網羅的解析を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
本学の運営交付金から配分された研究費を優先的に使用したため次年度使用が生じた。また、新型コロナウイルスの影響で、実験進行が当初の予定より遅れたので、消耗品等の購入は、研究の進行に並行して購入する方が望ましいと考え、予算を繰り越して使用することとした。
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