2020 Fiscal Year Research-status Report
Strategy for reconstruction of the injured white matter in spinal cord injuries
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20K09459
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西尾 健資 京都大学, 医学研究科, 助教 (70303790)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 軸索グリア複合体 / 脊髄切断 / 軸索再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脊髄損傷後の軸索再生を誘導するために、脊髄損傷部に存在する軸索伸長阻害因子を除去して、健常な白質組織に近い組織を再構築する「白質再建」の実用化に向けた研究である。この「白質再建」のプロトタイプとなるモデルは、研究責任者が2018年のNeuroscience Research誌に報告済みであるが、これについて簡単に説明する。成熟ラット脊髄をナイフで半切断すると、白質へのナイフの圧迫のため、切断部には異常軸索断片が生じるが、この軸索断片とアストロサイトの突起がナイフによる切断時の圧迫のために凝集体を形成することになり、最終的に切断部には異常構造物(研究責任者はこれを軸索グリア複合体 axonoglial complex, AGCと命名した)が沈着する。一方、研究責任者が脊髄切断直後の軸索の動向を詳細に観察したところ、切断された軸索は直後に一旦退縮するものの、それらのうちの一部は、直後に再生を開始して4時間以内に損傷部に達するものが存在することを発見し、責任者はこれを”再生的パイオニア軸索”と命名した。そこで責任者は、脊髄切断部の時間的空間的関係から上記AGCが再生的パイオニア軸索に対して伸長阻害していると考え、AGCを含む損傷組織を外科的に除去(デブリ)して白質断端を接合する操作(白質再建術)を行なった。その結果、再生的パイオニア軸索は4時間以内に損傷部を超えて再生して、そのまま本来の白質経路を直進した。すなわち、早期の「白質再建」により白質経路が復元した。 これをプロトタイプとして、本研究では、脊髄挫滅のような、より広範な白質再建にも対応しうる方法の開発を目的とする。 しかし、2020年度に予定していた実験の大半が、緊急事態宣言下の研究制限のために、実施できなかった。 ただ、AGC形成過程の解析実験から、AGC形成には血液凝固系のフィブリンが関与していることが疑われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、コロナウイルス感染症のため緊急事態宣言が発出され、研究活動が制限された。 そのため、予定していた実験の大半が実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルスによる感染防御のための緊急事態も、今年度(2021年度)は解除されて、研究活動への制限が解除されることが見込まれており、昨年度実施できなかった実験も実施できると考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度は、コロナウイルス感染による緊急事態宣言のために、研究活動が制限されて十分に実施できなかった。 2021年度は、研究を完遂するために実施計画を見直して、前年分を補う実験を計画している。実験効率を上げるために、時間管理に努める。
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