2022 Fiscal Year Annual Research Report
Strategy for reconstruction of the injured white matter in spinal cord injuries
Project/Area Number |
20K09459
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西尾 健資 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70303790)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 軸索再生 / 軸索断片 / 軸索グリア複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脊髄損傷後に神経経路を再生させるための新たな治療法の開発を目指した。成熟ラットの脊髄を切断すると、同時に切断された軸索は一旦退縮するが、その数時間以内に再生(再伸長)を開始することを研究代表者は局所軸索トレーシングにより見出した。その後、再伸長を開始した軸索は脊髄切断後2-3時間で切断部に達したが、切断部に存在する異常構造物により軸索伸長が阻害され、損傷部を超えることができないものと判断した。次に、研究代表者はこの異常構造物が軸索断片とグリア突起がフィブリンにより凝集した物であることを突き止め、軸索グリア複合体(AGC)と命名した。そして、脊髄切断時にAGCが形成される機構として、ナイフによる局所的な脊髄圧迫変形により二次的軸索切断が軸索断片を形成し、巻き込まれたグリア細胞の突起も含めて血液凝固により凝集してAGC形成に至ると推定された。 そこで、研究代表者は「脊髄切断後に早急に局所のAGCを除去すれば損傷部を越えて軸索再生は起こるだろう」との作業仮説を立て、その実証を試みた。具体的には、脊髄切断して局所を再接合したのちに、局所にフィブリン融解を促すプロテアーゼ(t-PA, bromelain等)を投与したところ、5割以上の高い確率で損傷部を越える軸索再生を実現できた。ただ、切断時の出血量はコントロールすることが困難で、同処理での失敗例の大半は局所の再出血であった。 次に、本研究のタイトルにもなっている「白質再建」であるが、成熟ラット 脊髄を切断後に、ナイフにより切断端の白質を外科的に切除して再結合したところ、6割以上の高い確率で損傷部を越える軸索再生を認めた。これにより、AGC形成機序として、局所の圧迫変形が重要であり、切断端除去時の二次切断ではこれを軽減できたことが大きいと判断された。 以上より、白質再建により損傷部を越える軸索再生を誘導できることが示された。
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